[教育]下村文科大臣が、「教科書改革実行プラン」公表
11月15日、下村博文文科大臣は、「教科書改革実行プラン」を発表しました。
自民党では、6月に「教科書検定のあり方分科会」(萩生田光一座長)が安倍総理に、中間報告を提出。それ以降、文科省内部で当面の教科書制度改革について検討してきました。
当初、官邸の「教育再生実行会議」のテーマとすることも検討されましたが
(1)大臣告示など現在の制度下で改善可能なもの
(2)八重山教科書採択地区問題などから必要とされる制度改革、
等を検討した結果、文科省内で実務的に作業を進めることを優先したといえます。
教科書制度改革は、大きく「編集」「検定」「採択」の行程に分かれます。
今回のプランでは、「編集段階」において、「教育基本法の目標に合致した教科書編集」を教科書会社に促すため、編修趣意書等の提出書類の改善、教科書会社ごとの提出書類をHPで公開することなどを盛り込みました。
これらは「検定規則」に明記されるはずです。
2番目の「検定段階」では、「教科書検定基準」を見直します。
「バランスを欠いた教科書の修正」「手続きの透明性向上」のため、検定基準を見直します。新設条項として「政府の統一的な見解や確定した判例に関する条項」が設けられます。
また、「教育基本法の目標に照らして重大な欠陥がある場合、不合格とする要件について明記する」とあります。
「政府の統一見解」については、いくつか懸念があります。
例えば「河野談話」「村山談話」「菅談話」といった、歴史認識に関するものです。
こうした談話も政府見解であり、これらが大手を振って教科書に掲載される恐れもあります。
日本会議は5月、自民党に対して、
「領土・領海、国旗・国歌、安全保障といった国家の主権に関わる事項については、政府の見解が取り上げられていること」との枠をはめるよう申し入れています。
一方「確定した判例」という点も重要です。外国人参政権に関する最高裁判決の「傍論」はどうなるのでしょうか。
あくまでも「傍論」であると検定しなければなりません。
一方、今年9月の婚外子問題に関する「違憲判決」などが、あたかも我が国の家族法制全体が遅れているものとして利用されることも考えられます。違憲判決が出された事実は尊重しながらも、学習指導要領を逸脱した執筆者の主張が教科書に登場しないよう、今後の検定審査は一層重要となります。
今回のプランでは、「通説的な見解がない場合や、特定の事柄や見解を特別に強調している場合、バランスのとれた記述にする」とあります。これは「南京虐殺」や「慰安婦」を念頭に置いたものと言えるでしょう。
この点で懸念されるのは、多様な学説が強調されるあまり、例えば「神武天皇はいなかった」や「聖徳太子はいなかった」などの学説が、教科書に盛り込まれ、歴史の流れが読み取れなくなる恐れがあります。
以上のような懸念については、検定基準よりも「学習指導要領」や「教科書法(仮称)」での定義づけということになっていくでしょう。
日本会議ではこの点についても、「その時代時代の我が国の立場への理解を育み、当時の人々の心情についても偏りなく取り上げることで、我が国の歴史や先人についての誇りと愛情を育むことを歴史分野の目標として明記すること」と、自民党に申し入れています。
第3段階の「採択」については、八重山地区を念頭に、「地域の実情に沿った採択地区設定」「採択地区内で一本化できない事態の防止」のため、「共同採択の協議ルールの明確化」「採択地区の設定単位を柔軟化」「採択情報の公表促進」となっています。
今後の作業日程としては、検定について今月中に「検定審に審議要請」を行い、来年1月に新しい検定基準を告示し、春の中学校の検定申請に間に合わせる予定です。
採択制度の改善については、「無償措置法」の改正が必要となります。
政府の考えでは、今月中に中教審で審議を始め、来年の通常国会で法改正を実現したいと考えているようです。
日本会議では、これまで教科書行政を統括する「教科書法」の必要性を訴えてきました。
自民党の「教科書検定のあり方部会」の幹部は、今後の道徳の教材を検定教科書としていくこと等を踏まえ、総合的な「教科書法(仮称)」と「学習指導要領」改訂が必要であると述べました。
学習指導要領の改訂作業が始まる平成27年を目途に、「教科書法」については、2段構えで進むものと考えられます。
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