[声明]習近平国家主席の国賓としての招聘を憂慮する声明( 令和2年2月7日)
■習近平国家主席の国賓としての招聘を憂慮する声明
周知のように、日中両国の間には「4つのトゲ」と称される「尖閣諸島」「日本人拘束」「日本食品輸入規制」「香港・ウイグル」の外交問題があるが、中国は日本政府の要求を拒み続けており、改善の見通しは全く立っていない。
その中にあって、河野防衛大臣は1月、米国において、尖閣諸島周辺で中国公船が今なお活動していることに触れ、「中国が状況を改善する努力をしなければ、4月に予定している習近平国家主席の国賓としての日本訪問に支障を来す」と講演したと報じられている。
それに加えて、河野大臣は香港やウイグルなどの人権問題、南シナ海での軍備拡張を念頭に、「中国が自由や民主主義、法の秩序といった国際規範をないがしろにするなら、国際社会と連携して、中国に相応のコストを支払わせる状況をつくる必要がある」と語った。極めて正論である。
安倍政権は発足以来、地球儀を俯瞰する外交戦略を掲げ、「積極的平和主義」などの取組みは、各国の幅広い理解と支持を得てきたが、このまま習主席の国賓としての来日が実現すれば、日本外交に大きな禍根を残しかねない。
一般に、隣国と諸課題を協議し、関係改善に向けた首脳外交を行うことは重要である。毎年あまたの国家元首級の要人が来日している。しかし、国賓としての招聘は別であり、僅かに1~2か国に限られる。現在の中国の国内外での振る舞いを見れば、中国が国賓待遇の国としてふさわしいと言えないことは明らかである。
また、国賓としての来日の場合、天皇陛下とのご会見、宮中晩餐会など、天皇皇后両陛下はもとより、皇族方は心を込めたおもてなしにのぞまれることになる。ご会見の席で、習近平主席から天皇陛下に中国ご訪問の要請があることはほぼ間違いあるまい。
歴史を振り返れば、平成4年、宮澤内閣は中国の求めに応じ、上皇上皇后陛下の中国ご訪問を強行したことがあった。それは、無抵抗の市民・学生を人民解放軍の武力で鎮圧した、いわゆる「天安門事件」によって国際的に孤立していた最中のことである。当時の中国の銭其琛外相は、のちに「日本の天皇がこの時期に訪中したことは、西側の対中制裁を打破するうえで、積極的な作用を発揮した」と、天皇ご訪中を政治的に利用したことを誇らし気に認めている。その轍をふたたび繰り返してはならない。
昨年10月の内閣府の調査では、75.5%の日本国民が日中関係を「良好だと思わない」と実感しているように、中国に対する国論は非常に厳しい。
翻ってみれば、昨秋、即位礼正殿の儀にのぞまれた天皇陛下は、内外に「日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と宣明された。
もしも政府が、国論が分かれている中で習主席の国賓招聘に固執するならば、「日本国及び日本国民統合の象徴」としての天皇陛下の御品位を傷つけることになる。
更に現在、中国の武漢で発生した新型コロナウィルスは、世界的な猛威を振るい始め、中国本土での感染者は既に3万人を超え、死者も600人に達した。そして新型肺炎は終息どころか今後の拡大予想さえつかない。このような時期に中国の最高責任者を国賓として招くことは国民だけでなく国際社会の理解も得られない。
我らはここに習近平主席の国賓としての来日が我が国の国益を大きく損なうことを深く憂慮し、その前に政府があらゆる外交ルートを通じて、中国に対し両国間に横たわる重要課題の解決に尽力するよう働きかけることを強く求める。
令和2年2月7日 日本会議