【教科書・採択】中学校教科書を点検する!~「歴史」「公民」「地理」
中学校教科書を点検する!~「歴史」「公民」「地理」
中学校教科書の検定結果が発表され、各都道府県では6月~7月にかけて教科書展示会が行われています。 (※「教科書展示会」の日程・会場などについては、文部科学省ホームページをご覧下さい。http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/center.htm)
新しい「教育基本法」と「学習指導要領」の下で教科書はどう変わったのでしょうか。
学習指導要領とその解説書の主な改善箇所に沿って各教科書の内容について分析してみました。(各教科書は平成22年に検定申請された内容を分析)
■歴史教科書 ~7社を3テーマで比較
「我が国への愛情をもった国際人」
指導要領の目標に照らし、歴史教科書の結びの部分を検証した。
教科書の結論は一年の学習を振り返り、教科の目標を再確認するものでなければならない。
日本の歴史に対する理解と愛情を持ち日本人としての自覚を持って国際社会に活躍していく趣旨が明らかな教科書は、「育鵬社」、「自由社」、「帝国書院」の3社であった。
逆に日本への理解と愛情の観点がなく、日本社会が抱える問題だけに言及しているのが、「教育出版」、「清水書院」、「日本文教出版」であり、「東京書籍」は、地球市民として生きることを強調している。
「東京書籍」の「地球市民」は、指導要領解説書をふまえず、解説書がいう「偏った理解」を導くもので失格だ。
「アイヌの人たちや在日外国人、外国人労働者への差別や偏見をなくすことも同様です。」(教育出版)、「男女平等の実現や部落問題の解決、障がい者の社会参加の促進などの努力を続けていかなければならない。」(清水書院)も問題教科書だ。
「古代の人々の信仰と私たち」
神話について、指導要領は従来から「神話・伝承などの学習を通して、当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせる」と定め、「古事記・日本書紀」から具体的な学習教材を例示することを要請している。
「育鵬社」は祖先崇拝の伝統が今日の日本にも受けつがれていること、
「自由社」は「国譲り神話」を題材に、日本人の協調精神や勝者が敗者の功績を認める伝統を記した。
清水書院は、出雲地方に残る地名が神話に由来することを解説し、帝国書院は宮崎県の高千穂神楽、島根県の石見神楽が神話に由来することを述べた。
「憲法制定の意義と条約改正の苦闘」
近代史のトピックである大日本帝国憲法と条約改正について、学習指導要領はアジアで唯一の立憲国家となったことと、条約改正への先人の努力を描くよう求めている。
清水書院は、帝国憲法制定と議会開設を「不完全ながらも」と消極的に評価したため減点した。
「育鵬社」は憲法制定を国民や自由民権派が歓迎したことを掲載、「自由社」は海外のメディアや学者が帝国憲法制定を賛嘆したことを記載した。
条約改正についても「育鵬社」と「自由社」は、陸奥宗光の奮闘を記し、条約改正がいかに困難な取り組みであったかがわかるようになっている。それ以外の5社は、鹿鳴館などの欧化政策や、ロシアの南下を恐れるイギリスの意図について力点が置かれ、当時の日本人の苦悩が伝わる内容とはなっていない。
■公民・地理教科書
「伝統と文化」「防衛と国際貢献」「領土」の3点について採点
上記の3つのテーマ全てで保守系の「育鵬社」「自由社」は指導要領解説書を踏まえた教科書を編集しています。
※解説書に掲げられた観点が多岐にわたるため、各教科書の特色が現れる点に絞りました。
「伝統と文化、宗教」については東京書籍の得点が低い。
東京書籍は、琉球やアイヌ、在日外国人といった独特の文化に多くの頁を割く一方、日本文化については、各地域に伝わる個々の多様な文化に触れるのみで、「我が国の文化」には触れていない。
解説書が示す「我が国の伝統的な考え方や信仰」「自然や社会の中でどのように受け継がれてきたのか」という観点は内容が乏しい。
文化の継承については結論が「観光資源としての文化財の活用」に逃げており、指導要領解説書を逸脱している。
一方、各社「伊勢神宮の式年遷宮」(日本文教出版)、「地鎮祭」(教育出版)、「出雲大社」「神田明神」(東京書籍)など、従来タブーとされてきた宗教の領域について、教育基本法に「宗教に関する一般的教養の尊重」が規定されたことを受けて掲載されたことは一定の前進があった。
多くの教科書が「自衛隊が果たしている役割」「自衛隊・日米安保を通した世界平和」について記述していないため減点の対象となる。
また我が国が行っている自衛隊の国際貢献について、反対論を掲載しているものは減点とした。
指導要領には記載されていないが、各社とも合憲論・違憲論の両論併記に頁を割き、生徒に公平に考察することを促しているように編集しているが、「育鵬社」、「自由社」以外の教科書は「果たしている役割」を記述しておらず、軸足は従来どおり違憲論に置かれている。
竹島を北方領土と同様「固有の領土」「不法占拠」を記載しているかを採点し、韓国の主張のみ触れたものや、「不法占拠」を「占拠」とだけ書いたものは減点とした。
尖閣諸島については解説書に規定がないものの、指導要領が定めた指針である「我が国が正当に主張している立場」の観点から、領有経緯や「固有の領土」と記述しているかを採点し、中国の主張のみを記載しているものや、領有経緯が不明なものは減点とした。
今回調査したテーマの観点を調査しただけでも教育基本法・学校教育法・学習指導要領の形骸化が新教育課程のスタート時点で既に始まっていることが分かる。
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