[ブラジルからの提言]鰹節(かつおぶし)と日本の食文化
花のパリに「かつお節」工場が進出し、パリジェンヌを驚かしている。
ブラジル鹿児島県県人会創立100周年に来伯した鹿児島大学の原口名誉教授のもたらしたニュースである。大西郷の生まれ故郷、薩摩半島の一角にある枕崎市はかつお漁港として知られているが、かつおぶし生産地としても有名である。
かつお節の生産には独特の技術があって、冷凍技術のなかった時代の保存食として珍重された。かつお節は、いったん確実な方法で出来上がってしまえば、長時間の保存に耐え、どれだけ遠くにまで容易に運べ荷痛みしない誠に便利な製品である。栄養価が高く、尚かつあの香りは、日本食には無くてはならない味覚を提供する。今時日本の家庭でかつお節を削ることはあるまいが、小さなパックに入った「かつおぶし」のあの色合いと風味は、日本食を支える大事な食品である。
その「かつお節」がヨーロッパの文化の中心地、フランスのパリに進出した。西洋料理の中ではフランス料理が抜群の料理法を持ち世界の食通をうならせている。フランスには「ミシュランガイド」というレストラン・ガイドという本があって毎年100万部も売れている。1900年に創刊された世界的な権威を持った本で、これに登録されているのは、2010年版でパリは77軒、東京は197軒が登録されている。3倍近い軒数にフランスの美食家たちは驚ろいている。日本の食文化が世界を席捲しているひとつの表れだ。
ブラジルにおいても、国際料理といわれる「シュラスコ=焼肉料理」店の数がサンパウロで500軒というのに、おすし屋が600店も出来ている。「すし」そのものが日本料理としてすごい勢いでブラジル人の生活の中に浸透しはじめている。
日本の食品は麹の文化といわれている。かつお節はじめ味噌、醤油、納豆
など日本独特の産物であるが、これが今世界に向かって振興し始めている。その上に日本独特の調理法が、注目をあつめ、そのベースとなるかつお節味とか昆布だし味に興味が広がっている。
日本が未来に向かって広がってゆく最大の武器は、日本で培われた文化の深さと奥行きである。日常食べている食品の中にも日本文化が息づいている。
料理の仕方一つにも、各家庭の味が生きている。日本の食文化が無形の世界遺産に登録されるそうだが、日本人が自信を持って輸出できるのは、やはりどの国も真似の出来ない日本独特の文化に結びつく仕事ではないだろうか。
2013/12/12 ブラジル日本会議 理事長 小森 広
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