[安保] 安全保障関連法制問題に関する本会の見解を発表いたします
平成27年7月6日、安全保障関連法制問題について本会の見解を発表いたします。
平成27年6月4日の衆議院憲法審査会で、自民党推薦の憲法学者ら参考人全員が国会で審議されている安全保障関連法案を「従来の政府見解の枠を超える」などとして「違憲」としたことから、反対派が勢いづき審議が難航することとなった。この結果、通常国会の大幅延長、また憲法審査会の審議中断という事態となった。
そもそも集団的自衛権については、国連憲章51条において主権国家が持つ固有の権利とされている。この51条に関して、わが国は国連に加盟するにあたって何の留保条件もつけてはいない。日本が留保なしで国連憲章51条を受け入れ、また憲法9条が明示的に集団的自衛権を禁止していない以上、憲法9条の下においても、集団的自衛権を含めた自衛権の行使は当然認められる。昭和34年の砂川事件最高裁大法廷判決も、米軍駐留および日米安保条約という集団的自衛権にかかわる事案において、わが国が主権国家として「自衛権」を有し、「必要な措置」を取り得るとしているのである。
しかも今回国会に提出された安全保障関連法案は、日本以外の武力行使であってもそれによって「日本の存立が脅かされる危険がある場合」に限って集団的自衛権の行使を容認しようとする「集団的自衛権限定容認」の立場に立つものである。
また集団的自衛権の行使の限度も、これまでの政府解釈において憲法9条が認める自衛権行使の条件とされてきた「必要最小限の実力行使」にとどまる。したがって安全保障関連法案は憲法9条の許容範囲であり、合憲であることは明白である。
近年、わが国を取り巻く国際環境には、劇的な地殻変動が起きている。アメリカのオバマ大統領が『世界の警察官』をやめると宣言したとたんに、中国は、南シナ海を自国領海であるとして軍事基地化を強行して、関係諸国と深刻な対立を引き起こしている。この海域は、わが国の重要な海上輸送路でもあり、航行の自由が脅かされる事態となっている。
こうした国際環境の変化に対応するべく、日米関係を中心に国際協力をより強力にしてアジアの平和を維持するため、国会は、速やかに安全保障関連法案の成立をはかるべきである。これらの法案が成立し、日米の同盟関係が強化されれば、わが国の平和に大きく資するのみならず、フィリピンはじめ東南アジア諸国の期待にわが国が応えることにもなる。
それとともに、安全保障関連法案をめぐる国会論議は、自衛隊の活動のあり方が憲法9条論争を招き、世界の平和とわが国の安全を守るために必要な政策決定が滞るという、過去幾度も繰り返されてきた悪例を再現したものとなった。この貴重な時間の空費のそもそもの原因は、憲法9条が自衛隊の存在に一切触れておらず、そのため、自衛隊を合憲とする政党と違憲とする政党が国会に混在していることにある。
平成27年3月発表の内閣府の世論調査によれば、現在、国民の75.5%は日本が戦争をしかけられたり巻き込まれたりする危険があると考えており、ほとんどの国民がそう思う理由を「国際的な緊張や対立があるから」としている。一方、憲法9条があるからそうした危険はない、と考える国民は8.5%にしか過ぎない。そして91.2%の国民は、自衛隊を支持し、日本の安全保障を自衛隊が担うことを期待している。
わが国を取り巻く国際環境の変化や国民世論を踏まえ、国会は、速やかに憲法審査会の審議を再開して、一刻も早く自衛隊の存在を憲法に明記するために憲法9条改正案を発議し、国民の意思を問うべきである。
平成27年7月6日
日 本 会 議