学校行事としての靖国神社・護国神社訪問が解禁へ
①衛藤晟一議員の質問に対して、渡海文科大臣が、訪問を禁止した「昭和24年通達」の該当箇所の「失効」を明言
②平沼赳夫議員の質問主意書に対して、「学校行事の一環として靖国神社等を訪問してよい」と閣議決定
驚くべきことに、「学校が主催して、靖国神社、護国神社(以前に護国神社あるいは招魂社であつたものを含む)および主として戦没者を祭った神社を訪問してはならない。」――この一節によって戦後、学校行事としての靖国神社・護国神社訪問が禁止されてきました。
問題の一節は、昭和20年にGHQが出した「神道指令」を受ける形で昭和24年10月25日に出された「社会科その他、初等および中等教育における宗教の取扱について」の一節です。神道指令については「我が国の独立によりまして効力を失った」(前田正道内閣法制局第一部長、昭和59年3月10日、衆議院予算委員会)にもかかわらず、この一節だけは講和独立後も有効とされ、子供たちは戦没者を追悼する機会を奪われてきたのです。
●衛藤晟一議員の質問に、渡海文科大臣が「失効」を明言
事態を重く見た衛藤晟一議員が平成20年3月27日の参議院文教科学委員会でこの通達について質問、渡海文部科学大臣は「該当項目は既に失効している」と明言し、「今後、誤解が生じないよう、適切に対応したい」と表明しました。これによって占領以来半世紀ぶりに、学校行事の一環として児童・生徒は靖国神社や護国神社を訪問することができるようになりました。
さらに、学校で靖国神社など特定の施設について批判的な授業を行うことについても、渡海文部科学大臣は「国公立学校は宗教に対する援助や圧迫などに当たる活動は禁止されている」として、「差別的な扱いは解釈を押し付けることになり、好ましくない」との認識を示しました。これによって学校で靖国神社や護国神社について誹謗・圧迫するような授業は行ってはならないことが明確にされました。
●平沼赳夫議員の質問主意書に対して、靖国神社訪問解禁を閣議決定
続いて衆議院の平沼赳夫議員が下記のような質問主意書を出したのに対して、政府は平成20年5月23日、答弁書を閣議決定しました。
この答弁書でも、昭和24年通達の該当の一節が「既に失効している」と明言し、「文部科学省としては、学校における授業の一環として、歴史や文化を学ぶことを目的として、児童生徒が神社、教会等の宗教的施設を訪問してもよいものと考えている。そのような趣旨で、例えば、御指摘の靖国神社等についても、同様の目的で訪問してよいものと考える。」として、修学旅行や野外研修として靖国神社や護国神社に訪問してよいことを公式に認めました。
さらに靖国神社や護国神社を訪問した際、宮司やその関係者から、児童・生徒が、靖国神社等の由来や参拝の仕方について説明を聞くことも構わないことが明確にされました。
【ご参考】
学校行事として靖国神社・護国神社訪問を禁じた文部事務次官通達に関する質問主意書及び答弁書
右の質問主意書を提出する。
平成二十年五月十四日 提出者 衆議院議員 平沼赳夫
内閣衆質一六九第三八〇号 別紙の通り(閣議で決定した)答弁書を送付する。
平成二十年五月二十三日 内閣総理大臣 福田康夫 (※答弁は赤の斜体字)
昭和二十四年十月二十五日に文部事務次官が出した「社会科その他、初等および中等教育における宗教の取扱について」(以下「昭和二十四年文部次官通達」と略称)の件で質問する。
この通達は、靖国神社や護国神社を学校行事として訪問してはならないと命じており、戦後半世紀以上もこの通達によって学校行事として靖国神社や護国神社を訪問することが禁じられてきた。確認したところ、都道府県教育委員会のホームページにも、学校行事としての神社・仏閣等の訪問にあたって、この「昭和二十四年文部次官通達」を参考にあげている場合が多く見受けられる。児童・生徒が、戦没者追悼の中心的施設である靖国神社や護国神社を学校行事として訪問し、我が国の戦没者追悼のありかたを知る機会を奪われてきたということは大変遺憾である。
従って、次の事項について質問する。
一 平成二十年三月十四日付産経新聞によれば、この「昭和二十四年文部次官通達」が出される一年余り前の二十三年七月、旧文部省は教科書局長通達で、国公立の小中学校が主催して神社仏閣、教会を訪問することをGHQ(連合国軍総司令部)の「神道指令」に反するとして全面禁止したという。この「教科書局長通達」が出された経緯はどのようなものか。また、この「教科書局長通達」の法的根拠は何か。
一について
文部科学省としては、御指摘の「学習指導要領社会科編取扱について」(昭和二十三年七月九日付け発教百一号文部省教科書局長通達。以下「局長通達」という。)は、国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件(昭和二十年十二月十五日付け連合国軍最高司令官総司令部参謀副官発第三号日本政府ニ対スル覚書。以下「覚書」という。)を受け、これに抵触するような指導が学校において行われることを避けるため、当時、教育に関する事務を所掌していた文部省において発出されたものと考える。
二 昭和二十三年の「教科書局長通達」が、「昭和二十四年文部次官通達」に変更となった経緯はどのようなものか。
三 「昭和二十四年文部次官通達」の法的根拠は何か。
二及び三について
文部科学省としては、御指摘の「社会科その他、初等および中等教育における宗教の取扱について」(昭和二十四年十月二十五日付け文初庶第百五十二号文部事務次官通達。以下「事務次官通達」という。)は、局長通達の発出後、社会科の教育のみならず広く初等教育及び中等教育における宗教に関する事項について研究協議を行い、その結果得られた結論を踏まえて、当時、教育に関する機関に対する専門的、技術的な指導・助言等に関する事務を所掌していた文部省において発出されたものと考える。
四 平成二十年三月二十七日の参議院文教科学委員会における衛藤晟一議員の質問に対して渡海文部科学大臣は、「昭和二十四年文部次官通達」の一の(二)の「学校が主催して、靖国神社、護国神社(以前に護国神社あるいは招魂社であったものを含む)および主として戦没者を祭った神社を訪問してはならない。」という一節について、「靖国神社等の取扱いについては既に失効している」と答弁している。改めて確認するが、この一節は正式に失効しているとみなしていいか。
六 該当の一節について、平成二十年三月三十一日の参議院文教科学委員会における西田昌司議員の質問に対して渡海文部科学大臣は「日本がサンフランシスコ講和条約に調印しまして、これが発効したのが二十七年四月二十八日でございますから、これをもって失効していると、こういうふうに理解をしていただけたら結構だと思います」と答弁している。つまり、該当の一節は、サンフランシスコ講和条約の発効をもって失効したとみなしていいか。
七 該当の一節がサンフランシスコ講和条約の発効とともに失効したとすれば、それはどのような理由なのか、説明されたい。
四、六及び七について
文部科学省としては、御指摘の事務次官通達の一節は、覚書に抵触するような指導が学校において行われることを避けることを目的としたものであり、靖国神社等について他の宗教的施設と異なる取扱いをする理由もないことから、日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)の発効により我が国が完全な主権を回復するに伴い覚書が効力を失ったことをもって、失効したものと考える。
五 該当の一節が失効しているとするならば、学校が主催して靖国神社、護国神社等を訪問してよいということになるが、そうした理解でいいか。
五について
文部科学省としては、学校における授業の一環として、歴史や文化を学ぶことを目的として、児童生徒が神社、教会等の宗教的施設を訪問してもよいものと考えている。そのような趣旨で、例えば、御指摘の靖国神社等についても、同様の目的で訪問してよいものと考える。
八 この「学校が主催して、靖国神社、護国神社(以前に護国神社あるいは招魂社であったものを含む)および主として戦没者を祭った神社を訪問してはならない。」にある「主として戦没者を祭った神社」には、「戦没者を祭った神社ではないが、境内に忠魂碑や戦没者慰霊碑が建てられている神社」は含まれていなかったと解釈していいか。
八について
文部科学省としては、「主として戦没者を祭った神社」に該当しないものであれば、境内に忠魂碑や慰霊碑等が建てられていたとしても、事務次官通達にある訪問してはならない神社には含まれなかったものと考える。
九 関連して日本の文化や歴史を調べる目的で学校が主催して靖国神社や護国神社等を訪問した際、靖国神社などの関係者より、その神社の歴史や由来、参拝の作法などについて説明を聞くことは問題ないか。
九について
お尋ねについては、個別具体の事情等を勘案して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難であるが、文部科学省としては、学校における授業の一環として、歴史や文化を学ぶことを目的として、神社、教会等の宗教的施設の関係者から当該施設の歴史、由来等について知識として説明を聴取することは、特段の支障がない限り、行ってよいものと考えている。そのような趣旨で、例えば、御指摘の靖国神社等についても、その関係者から同様の目的で聴取してよいものと考える。
十 学校行事として、特定の宗教を援助・助長・奨励する活動が禁じられているのは当然のことだが、一方、学校において靖国神社や護国神社など特定の宗教的施設を誹謗したり、その活動を圧迫したりするような学習を行うこともその宗教的施設に対する偏見を煽ることになり、好ましくないと考えるがどうか。
十について
文部科学省としては、学校において、特定の宗教を誹謗したり、その活動を圧迫したりするような内容の授業を行うことは好ましくないものと考える。
十一 この「昭和二十四年文部次官通達」の該当の一説が今なお有効であるという誤解が全国の教育委員会には残っているようである。この誤解を払拭するため、どのような具体的措置をとるのか。
十一について
文部科学省としては、今後、御指摘のような誤解を生じないよう対応を検討してまいりたい。