トランプ政権と日本の国防の基本姿勢(日本の息吹4月号より)
トランプ政権と日本の国防の基本姿勢-(日本の息吹4月号より)
― 次第に全貌を現わしつつある米トランプ政権。安全保障、日米同盟についての取り組みはどうか。しかし、そもそもアメリカからいわれるまでもなく、外国の脅威から日本の国益を護るため、国防予算の倍増など我が国が生き残るための国力増強こそ急務なのである。 ―
軍事社会学者
北村 淳 きたむら じゅん
東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業後、警視庁公安部等に勤務。ブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。現在、軍事コンサルタント(米シンクタンク)としてシアトル在住。著書に『米軍が見た自衛隊の実力』『写真で見るトモダチ作戦』『海兵隊とオスプレイ』『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』等がある。
* * *
■ トランプ政権の国防の基本方針
本稿執筆段階では、国防長官と安全保障問題担当大統領補佐官は決定しているものの、未だに海軍長官をはじめ国防総省の高官人事が落ち着いていない。当然のことながら、トランプ政権の安全保障戦略が具体的な形で打ち出されてはない。もっとも、トランプ政権に限らず大統領が交代した場合、新政権の安全保障戦略が明示されるには、その重大性ゆえに、ある程度の時間を要する。(トランプ政権でも2018年1月までに新戦略を練り直して発表されることになっている。)したがって、トランプ政権の具体的安全保障戦略に立脚して議論することは、現段階では、未だ時期尚早といわざるを得ない。ただし、大統領選挙期間中から就任後これまでのトランプ政権による安全保障関連人事の動向や、トランプ大統領はじめ安全保障関係者たちの言動などから、
(1)国防予算を大幅に増額し、アメリカ軍とりわけ海洋戦力を増強する。
(2)当面目に見える形でアメリカが軍事的に関与するのはIS撃滅作戦である。
(3)ロシアとの直接対峙は避け、NATO/EU諸国を前面に据えて対ロ牽制を実施する。
(4)覇権主義的海洋侵出の勢いが止まらない中国の勢いを牽制する。
という基本方針はほぼ確実と考えられる。
■ 米海軍増強の論理
これらのうち、日本の防衛そして日米同盟に直接関係するのは、中国の海洋侵出への対処である。オバマ政権は中国の海洋侵出政策に対して強硬な反対姿勢を示さなかったため、中国は南沙諸島に7つの人工島を建設してしまい、それらのうちの3カ所には本格的航空施設まで誕生させてしまうことになった。(中略)このような状況に対して、トランプ政権は中国の南シナ海全域にわたる完全なコントロールを阻止すべく軍事的な牽制を実施する姿勢を打ち出している。しかし、中国にとり南シナ海は「前庭」のような存在で広東省や海南島の数多くの航空基地や海軍施設から直接戦闘機、攻撃機、軍艦を繰り出すことができ、沿岸域に配備された多種多様の長射程ミサイルで迫り来るアメリカ軍艦や航空機を迎え撃つことができる。それに加えて西沙諸島や南沙諸島にも少なからぬ前方展開軍事基地を確保してしまった。一方のアメリカ軍は「フィリピンに多数の本格的軍事拠点を確保して、数百機の戦闘機や爆撃機、それに多数の軍艦を常駐させ、十万以上の陸海空海兵隊兵力を駐屯させる」といった状況にならない限り、空母艦隊を南シナ海に派遣して中国海洋戦力と対峙しなければならない。いくらアメリカ空母艦隊が遠征能力を誇っているとはいっても、空母艦隊は横須賀、ハワイ、そしてアメリカ西海岸から「中国の前庭」に長駆しなければならないため、距離の不利は圧倒的である。そのうえ、戦闘が予想される状況下で空母艦隊が出動するとなれば、戦闘攻撃機をはじめする70機以上の各種航空機を積載した原子力空母の他に攻撃原潜2隻、イージス巡洋艦2隻、イージス駆逐艦2〜3隻、戦闘補給給油艦1隻からなる戦時編制の空母打撃群を出動させなければならない。このような大艦隊は海に浮いているだけでも莫大な費用がかかる。それを少なくとも3セット以上は南シナ海に派遣することなど、とても現在のアメリカ軍にはできない相談である。ようするに、「第一次世界大戦後以来最小の規模まで落ち込んでしまった」と海軍関係者が嘆いているように戦力低下をきたしてしまった米海軍力を復活させない限り、とても「中国の庭」ともいえる中国沿海域で、中国海洋戦力の自由気ままな動きを封じ込めることなど、アメリカ海洋戦力(海軍と海兵隊それに空軍の一部)を持ってしてはできかねる、というのが現状なのだ。選挙期間中からこのようなアメリカ海洋戦力の現状をトランプ大統領にすり込んできた人々が、今やトランプ政権の安全保障政策の舵取りをしようとしている。ビジネスマンであるトランプ大統領自身も「海洋戦力の構築とはすなわち軍艦の建造を盛んになすことであり、軍艦の建造とは鉄鋼業から最先端技術まで幅広い分野での用が拡大することになる」という論理で、海洋戦力増強論者たちと利害が一致したのだ。したがって、国防予算を大幅に増額し、集中的に海洋戦力構築のために投入するというシナリオは確実に推進されていくのである。
以下は「日本の息吹4月号」につづく
月刊「日本の息吹」は、「日本会議」が発行する機関誌です。誇りある国づくりをめざすオピニオン誌として、新しい視点で明日の日本の進路と、日本再発見を提言します。
目次
グラビア
●今月の言葉/今林賢郁
●フォトグラフ
●トランプ政権と付き合うにあたって必要な日本の国防の基本姿勢とは何か/北村淳
● 特集「慰安婦」歴史戦を戦い抜け!(その2)日本の子供たちを誰が守るのか?~“憎しみの工場”の最大の被害者は子供たちだ/山岡鉄秀朝日・グレンデール訴訟最終準備書面(後編)
●[連載]新教育基本法下の教育改革/村主真人
●日本会議は結成20年を迎えます─誇りある国づくりめざして《20年の歩み①》日本会議の設立日本会議20年史年譜《前編》
●[書評]山村明義著『日本をダメにするリベラルの正体』
●[連載]憲法おしゃべりカフェ/愛知県
●糸魚川の大火災から学んだこと/白沢賢二
●「松柏学園・大志万学院訪日使節団」交流歓迎会
●[連載]コーシンの世相談義/髙信太郎
●息吹のひろば
特集~奉祝・建国記念の日~ 中国・九州地方
特集~奉祝・2月11日建国記念の日~ 中国地方
鳥取県
【米子市】鳥取県西部建國記念日を祝う会主催の記念祭典と講演会を開催。講師の中曽根語良氏(昭和聖徳記念財団元参事)が昭和天皇の御事績を語った。
広島県
【広島市】建国記念の日奉祝委員会主催の「第37回建国を祝う集い」が開催。天皇陛下の執刀医の天野篤氏(順天堂医院院長)が「日本を元気にする」と題し講演。
【福山市】日本会議福山支部主催の「平成29年建国を祝う会」が開催。奉祝式典と記念講演があり講師の小川榮太郎氏(文藝評論家)が記念講演。
岡山県
【岡山市】日本会議岡山主催による奉祝の神事と記念講演会が県護国神社で開催。評論家の江崎道朗氏が日本の皇室について講演。
【倉敷市】美しい日本の憲法をつくる国民の会岡山県児島支部・倉敷支部主催の「建国記念の日講演会」が開催。日本女性の会の植原弘子運営委員長が記念講演。
【津山市】日本会議津山支部主催の「建国記念の日を祝う会講演会」が開催。拓殖大学の李久惟客員教授が世界の中の日本文化を語った。
山口県
【下関市】下関市奉祝会主催の奉祝市民大会が開催。「みんなで歌おう日本の歌」と題し日本童謡の会が公演。その後市街において奉祝パレードを実施。
九州地方
福岡県
【福岡市】日本会議福岡主催の「日本の建国をお祝いする集い」が開催。高島宗一郎福岡市長が祝辞を述べ、また古代史研究家の長浜浩明氏が「日本建国史」と題し記念講演。
【北九州市】奉祝北九州市民大会実行委員会主催の「第51回建国記念の日奉祝北九州市民大会」が開催。講師の大葉勢清英氏(日本青年協議会代表)が平成の御巡幸を講演。
【久留米市】日本会議福岡県南支部主催の「建国記念の日・市民の集い」が開催。元NHKアナウンサーの宮田修氏が「神話に見る日本人の心」と題し講演。
【飯塚市】飯塚市郷友会主催の「飯塚市建国記念の日記念講演会」が開催。施光恒氏(九州大学大学院准教授)が「国語こそ祖國の要」と題し記念講演。
佐賀県
【佐賀市】奉祝会・日本会議佐賀主催の「皇紀2677年・建国まつり」が開催。奉祝式典とジャーナリストの三荻祥氏による記念講演が行われた。
長崎県
【長崎市】長崎日の丸会主催の「第58回建国記念の日奉祝式典・日の丸大行進」が実施。式典の後、自衛隊音楽隊を先頭に市内繁華街を奉祝パレード。
【対馬市】日本会議対馬支部主催の奉祝日の丸行進を実施。建国を祝い、国旗掲揚と憲法改正を訴えた。対馬市での日の丸行進は戦後初。
熊本県
【大都町】山都町奉祝会主催の「建国記念の日奉祝式典」が開催。奉祝行事として小中学生書道大会・青少年柔道大会・高校生弓道大会・グランドゴルフ大会も実施。
大分県
【大分市】奉祝実行委員会主催の「第12回日本の建国をお祝いする集い」が開催。奉祝式典と高橋史朗氏(明星大学特別教授)による記念講演会が行われた。
宮崎県
【宮崎市】日本会議宮﨑主催の「建国記念の日奉祝宮崎式典」が開催。紀元節祭、奉祝式典の後、皇学館大学の松浦光修教授による記念講演が行われた。
【延岡市】日本会議延岡支部主催の「延岡市建国記念の日記念講演会」が開催。宮崎大学の吉田好克准教授が憲法改正について記念講演。
鹿児島県
【鹿児島市】日本会議鹿児島・鹿児島県神社庁共催の「建国記念の日をお祝いする鹿児島県民の集い」が開催。産経新聞の安本寿久特別編集委員が神武天皇について記念講演。
沖縄県
【那覇市】日本会議沖縄県本部主催の「日本の建国を奉祝する沖縄県民の集い」が開催。石垣市元教育長の玉津博克氏が神話について記念講演。
特集~奉祝・建国記念の日~ 近畿・四国地方
特集~2月11日奉祝・建国記念の日~ 近畿地方
京都府
【綾部市】
日本会議京都北部支部主催の「建国記念の日を祝う京都北部府民の集い」が開催。元海上自衛官の伊藤祐靖氏が記念講演。
大阪府
【大阪市】
日本会議大阪主催の「皇紀2677年建国記念の日をお祝いする府民の集い」が開催。三重中京大学名誉教授の浜谷英博氏が記念講演。
三重県
【伊勢市】
日本会議伊勢支部主催の「第51回建国記念の日伊勢奉祝の集い」が開催。軍事ジャーナリストの井上和彦氏が記念講演。
兵庫県
【神戸市】
日本会議兵庫県本部主催の「建国記念の日を祝う会」が開催。中村学園大学の占部賢志教授が記念講演。
【姫路市】
姫路実行委員会主催による「姫路建国記念の日を祝う会」が開催。奉祝式典ののち三木英一日本会議兵庫会長や兵庫地方協力本部の中村清勝氏が記念講演。
奈良県
【橿原市】
日本会議奈良の有志により橿原神宮境内で憲法改正1000万賛同者拡大の署名運動を実施した。
四国地方
徳島県
【徳島市】
日本会議徳島県本部主催の奉祝式典が県護国神社で開催。羽ノ浦小学校の5、6年生が国の平和を願う雅楽「浦安の舞」を奉納した。
愛媛県
【松山市】
奉祝愛媛県実行委員会が主催し松山会場は県下7会場の県中央大会として開催。式典の後、講師の吉木誉絵氏が神話・古事記の魅力を語った。
【八幡浜市】
実行委員会主催の奉祝式典と記念講演会が開催。評論家の石平氏が「素晴らしい国日本」と題し記念講演。
【宇和島市】
実行委員会主催の奉祝式典と記念講演会が開催。産経新聞元ソウル支局長の加藤達也氏が「ソウルで感じた祖国日本の有難さ」を講演。
【西条市】
実行委員会主催の奉祝式典と記念講演会が開催。キャスターの葛城奈海氏が「日本を取り戻すとは」と題し講演。
高知県
【高知市】
日本の郷土を愛する高知県民の会主催の「建国記念の日奉祝県民大会」が開催。ジャーナリストの有本香氏が日本をめぐる国際情勢について講演。
特集~奉祝・建国記念の日~ 関東・中部地方
特集 ~奉祝・2月11日建国記念の日~ 関東地方
茨城県
【水戸市】
日本会議茨城主催の「建国記念の日奉祝茨城県民大会」が開催。美しい日本の憲法をつくる国民の会事務局の外村聖典氏が記念講演。
群馬県
【高崎市】
奉祝実行委員会主催の「建国記念の日奉祝式典」が開催、皇学館大学の新田均教授が記念講演。
栃木県
【宇都宮市】
奉祝会主催の奉祝式典とパレードが実施された。パレードは会場の二荒山会館からJR宇都宮駅まで市街を行進した。
埼玉県
【大宮市】
県建国奉祝会主催による「第60回建国奉祝式典」が開催。次世代政策研究会会長の中村匤志氏が記念講演。
千葉県
【鎌ヶ谷市】
日本会議鎌ケ谷支部主催の「奉祝式典」と地元高校生も参加したお神輿の「奉祝パレード」を実施した。
神奈川県
【鎌倉市】
日本会議神奈川主催の「建国記念の日奉祝神奈川県民大会」が開催、AJCN代表の山岡鉄秀氏がマスコミの偏向報道につき講演を行った。
中部地方
新潟県
【新潟市】
日本会議新潟支部主催の「日本の建国を祝う新潟の会」が開催。ソプラノ歌手の森敬恵氏が歌と講演を行った。
長野県
【松本市】
日本会議長野中信支部主催の「建国記念の日講演会」が開催。アジア支援機構代表理事の池間哲郎氏がアジアに愛される日本について講演。
岐阜県
【岐阜市】
日本会議岐阜県本部主催の「建国記念の日奉祝大会」が開催。ジャーナリストの山村明義氏が日本の皇室について記念講演。
静岡県
【浜松市】
奉祝運営委員会主催の「浜松市 建国記念の日奉祝式典」が開催。ノンフィクション作家の門田隆将氏が「リーダーの本質」と題して講演。
愛知県
【名古屋市】
日本会議愛知県本部主催の「日本の建国を祝う愛知県民の集い」が開催。憲法・皇室研究家の田尾憲男氏が記念講演。
特集~奉祝・建国記念の日~北海道・東北地方
~奉祝・2月11日建国記念の日~ 北海道地方
北海道
【札幌市】
日本会議北海道本部主催の奉祝道民の集いが開催。政治評論家の細川珠生氏が憲法問題で記念講演。式典後は札幌雪祭りで賑わう市街で奉祝パレードを実施。
【釧路市】
市民有志世話人で運営される奉祝式典には市内の各世代が参加。蝦名大也釧路市長も参加し日本の建国を祝った。
東北地方
青森県
【弘前市】
弘前市建国実行委員会主催による「第60回弘前建国祭」が開催。式典の後、三村三千代氏(八戸短期大学客員教授)が記念講演。
岩手県
【盛岡市】
県奉祝会主催の「第51回建国記念の日奉祝県民大会」に500名が参加。式典後、ジャーナリストの小森義久氏が記念講演を行った。
宮城県
【仙台市】
宮城県民大会実行委員会主催の「第51回建国記念の日を祝う県民大会」には、村井嘉浩知事、奥山恵美子仙台市長、県選出国会議員や県議、県民が多数参加。
秋田県
【秋田市】
奉祝会主催の「建国記念の日奉祝秋田県大会」が開催。ジャーナリストの佐波優子氏が記念講演。大会に先立ち街頭での奉祝アピールも実施。
山形県
【鶴岡市】
荘内神社で毎年開催されている「建国記念の日奉祝式典」。酒井忠久氏が記念講演を行った。
福島県
【郡山市】
郡山市奉祝会主催の「第52回建国記念の日奉祝郡山式典」が開催。産経新聞の阿比留瑠比論説委員が記念講演、式典後は日の丸大行進も。
特集~奉祝・建国記念の日~ 東京編
特集 ~奉祝・2月11日建国記念の日~ 東京編
「建国記念の日奉祝中央式典」
全国各地で開催される奉祝行事の中央行事として日本の建国を祝う会(大原康男会長)主催の「建国記念の日奉祝中央式典」が明治神宮会館で開催された。網谷道弘・日本会議理事長の開会の辞に始まり、大原会長が主催者挨拶し、日本建国の意義を披露し政府による式典開催を要請した。来賓挨拶は、各党代表より高村正彦・自民党副総裁、中山恭子・日本のこころ代表、石井苗子・日本維新の会国対副委員長より、在日外交団を代表してガーナ共和国特命全権大使のパーカー・アロテ氏より、それぞれ祝辞が述べられた。聖寿万歳が田久保忠衛・日本会議会長の先導で行われ、今林賢郁祝う会理事の閉会の辞で第一部式典が締めくくられた。第二部は小野雅楽会による奉祝演奏が披露。この日は式典に先立ち、会場の明治神宮会館に近い表参道では、神輿や大学生のブラスバンドによる奉祝パレードが行われ沿道を賑わせた。この日、全国各地では北は北海道から南は沖縄まで、奉祝式典や記念講演会、奉祝パレードなどの各種奉祝行事が約400を超える会場で実施された。多くの会場で記念講演や大会決議において憲法改正の必要性が提唱された。
●平成二十九年度 「建国記念の日奉祝中央式典」 決 議
本日、ここに平成二十九年、皇紀二千六百七十七年の建国記念日を迎えるにあたり、我々は、神武天皇が大和の国は橿原の宮で国の基(もとい)を定められたご偉業と「八紘(あめのした)を掩(おほ)ひて宇(いへ)と為(せ)ん」との詔(みことのり)を発せられた大御心を偲び、その建国の精神を守り伝えてきた我が父祖たちの献身尽力に対して、心からの敬意と感謝の意を捧げる。
天皇皇后両陛下は、神武天皇二千六百年祭の日にあたる昨年四月三日、神武天皇陵にて斎行された「山陵の儀」に臨まれ、続いて橿原神宮をご参拝になった。これは百年前の大正五年の神武天皇二千五百年祭に行幸啓された大正天皇と貞明皇后の先例に倣(なら)われたと承るが、両陛下の皇祖に対するご孝敬の念の厚さにあらためて深い感銘を覚える。
さて、昨年夏の参議院選挙の結果、衆参両院で憲法改正に賛同する勢力が三分の二を超え、活発な憲法論議を要望する声が全国各地にさらに広がりつつある。本年五月三日には日本国憲法施行七十年という節目の日が到来するが、我々は、神武建国以来の悠久の国柄を次代に正しく伝え、国の独立と繁栄を守るための新しい憲法の制定を目指して、この機にさらなる努力を積み重ねて行く決意を固めねばなるまい。
一方、世界に目を転じると、保護主義を強く主張する米国トランプ大統領の登場、英国のEU離脱、中国の覇権主義的な海洋戦略など、これまで支配的であったグローバリズムの潮流に抗(あらが)い、各国が国際的な取り決めよりも自国の利益を優先する傾向がさらに露(あらわ)になった。かような動乱の時代に否応なく直面している我が国は、自国の防衛を他国に大きく依存し、とかく内向きの議論に終始してきたこれまでの惰弱(だじゃく)な姿勢に断固として訣別し、真の自立を確かなものとするとともに、世界に調和と共栄をもたらす強い国へと飛翔すべき時期を迎えていると言えよう。
時あたかも、明年は明治維新百五十年にあたる。新しい国家建設の理念を「神武創業ノ始(はじめ)二原(もと)ヅキ」と宣明し、旧来の諸制度を抜本的に改め、世界に伍する近代的国民国家への躍進をもたらした明治の先人の気概にあらためて思いを致したい。
我々は、神武建国の精神が正しく受け継がれて行くよう、政府主催による奉祝行事の挙行を強く求め、誇りある国づくりに向けて一層邁進することをここに誓う。
本日、「建国記念の日奉祝式典」に際し、右、決議する。
平成二十九年二月十一日
日本の建国を祝う会・建国記念の日奉祝中央式典
日本会議への批判報道を糾す(日本会議会長 田久保 忠衛)
内外の一部マスメディアによる、ステレオタイプ化された日本会議への批判報道や出版が後を絶たない。その虚偽、誤解、偏見について、改めて反論する。(本稿は、『月刊Hanada』平成28年8月号に新たに加筆したもので、執筆・発刊時期は参院選前です)
日本会議会長 田久保 忠衛
■間違いだらけの関連書籍
先日、外国人記者クラブのライブラリで調べ物をしていたら、見ず知らずのフランス人記者が話しかけてきた。
「あなたがタクボか」と訊くので「そうだ」と答えると、「今日のThe Japan Times を見たか。あなたが出ていたぞ」と言われて驚き、すぐに The Japan Times を買い求めた。
記事は、朝日新聞政治部の園田耕司さんという記者が書いたもので、内容は日本会議について。記事では私をずいぶんと高く評価してくれている。
要約すれば、日本会議は憲法改正を企んでいる連中の集まりである、田久保が日本会議を作ってアイデアを出し、組織を牛耳っているのだ……。
ずいぶんと買い被られたものだ。
むろん、事実は全く違う。私が日本会議の会長になったのは昨年で、それまでは代表委員として事実上、名前をお貸ししていたに過ぎない。
日本会議は、一九九七年に「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」が統合する形で発足した。「国民会議」には私も講師として入っていたが、そこでもたいしたことはしていなかった。だから、私が影響力を持っているというのは過大評価である。
The Japan Times の記事はこう続く。
憲法改正について、安倍首相は熟慮して、これまでと違ったトーンになりつつある。ところが、日本会議はいまだに突出した考えを持って行動している。このままでは、日本会議はいずれ二つに分かれるだろう。一つは安倍首相に忠実なもの、もう一つは憲法改正すべきだとの方向に突き進むもの。二つに空中分解して次第に勢いを失っていくのではないか……。しかし、自民党が参議院選で大勝すれば話は別だが、と。
ここ一年前くらいから日本会議が注目され出し、特にこの四月に出た菅野完『日本会議の研究』(扶桑社新書)を皮切りに、関連書籍や記事が続々出ている。
ざっとあげるだけで、上杉聰『日本会議とは何か』(合同出版)、『Journalism』 「特集 存在感増す『日本会議』、組織、人脈、行動…右派運動ってなんだろう?」(二〇一六年五月号)、『週刊金曜日』 「特集 『戦後憲法』を敵視する保守運動 日本会議」(五月二十七日号)……。
どれもが日本会議を批判する内容で、今後も続々と出版されるようである。
国外でも、昨年六月にイギリスのThe Economist が日本会議について報じた。実はこの時、女性の記者が櫻井よしこさんのところに取材に行き、一時間半くらい話を聞いたという。
櫻井さんは真っ当なことをお話しになったようだが、それは紙面では全く取り上げられなかった。つまり、初めから日本会議を叩くのが目的で、櫻井さんから何か裏付け材料になるものを得ようという魂胆だったのだろう。
これらの記事が読まれて、下敷きとなり、各国で新たな記事がどんどん出ている。たとえばオーストラリア、フランス、ドイツの新聞が大同小異の記事を書いている。
日本会議としては、批判されるのは構わない。それが妥当なものであれば、反省すべき点は反省しようと思っている。ただし読んでみると、あまりにも的外れの批判が多すぎる。放っておくわけにもいかないので、会長として日本会議への誹謗・曲解に答えたい。
■新たな批判対象として
そもそもなぜ、日本会議が叩かれるのか。
我々日本会議は、「美しい日本の憲法 をつくる国民の会」の参加団体として、一千万人賛同者拡大運動を行っている。七月に実施される参議院選挙後に、憲法改正の国民投票が行われることを目指したもので、時期的に見ても参院選で憲法改正が大きなイシューになると考えていたからスタートしたのである。
ところがここにきて、The Japan Times も書いているように、安倍首相のトーンが変わってきている。おそらく安倍首相としては、安保法制の際にエネルギーを使いすぎて、いまは大きなことをしたくない。憲法改正への手続きは大変だから、まずは参議院選挙で三分の二を確保することに集中しよう──という政治的判断をされたのだろう。それは安倍首相の判断だから、こちらからとやかく言うことは控える。
しかし我々は政治家ではないので、直線的に手がけた仕事を最後までやるぞ、と参院選を前にして盛り上がっている。そうなれば憲法改正という点において、当然、我々の存在は突出したものになる。
突出するために運動しているのだから当たり前だが、しかしそれが目障りだと感じる人も出てくる。よし、ここで叩いておこう、というのが日本会議批判派の最大の狙いではないかと思う。
特にThe Economist ではそれがよくわかる。書かれていることを箇条書きで抜き出すと──。
・日本会議は歴史修正主義者を集めている。
・第二次世界大戦で東アジアを解放した、と戦前を賛美している。
・軍隊を再建しようとしている。
・愛国主義だ。
・「左翼の教師たちが子供たちを洗脳しようとしている」と騒いでいる。
・戦前の天皇絶対主義を再現しようとしている。
どこかで聞いたことがあるような批判である。
すなわち、この雑誌は時代錯誤的リベラルなのだ。実はいま、アメリカではリベラルは孤立主義と同じような蔑称になりつつあり、リベラルであることを隠すアメリカ人が圧倒的に増えていて、自分たちを「progressive」(進歩的)と自称するようになっている。そういった人たちが、この記事を書いたのだろうか。
彼らはニューヨーク・タイムズ(NYT)を中心に、ずっと安倍首相を叩いてきた。それでも首相の支持率は高いままだ。ナショナリストだと繰り返したが、そうではなかった。アメリカでも評判がいい。G7も安倍首相の独り舞台だった。オバマ大統領も広島に来た……となると、安倍首相を叩くことができなくなってきた。そこで、批判する対象として日本会議が登場するという構図だろう。
■改憲の何が悪いのか
そもそも、改憲論者で第九条の二項を変えようという者はいるが、一項を変えようという者はいない。念のため引用すると──。
一、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
二、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
読めばわかるように、一項は「侵略戦争をしない」との意味で、これに反対する人はいまい。しかし、二項のままでは自衛隊は軍隊ではない。国内法では憲法の制約から軍隊ではないが、「国際的には軍隊とみなされます」と国会答弁され続けてきた。二項がどれだけ現実とそぐわないかは、見てのとおりだ。仮に自衛隊員が海外で捕えられ、「軍人としての正当な待遇を求める」と主張しても、「諸君らは国内法では軍隊ではない」と言われることも考えられる。こうした不整合な状態は解消しなければならないだろう。
ところが、The Economist は「紛争解決の手段として」武力の威嚇や行使はしない──との第一項を廃止しようとしている、と書いている。
九〇~九一年にかけて、サダム・フセインがクウェートを占領したのを、ブッシュシニアが多国籍軍を使って追い出した。クウェートはワシントン・ポストの一面を使って感謝広告を出したが、そこに日本の名前はなかった。
他ならぬ The Economist が「重大事に昼寝をしていたのか」と日本を批判し、私は「そのとおり、さすがThe Economist だ」と著書に引用したことがある。しかし、今回の記事では正反対のことを言っている。
これまで日本は憲法九条があるために、経済以外での国外での活動はしてこなかった。そんな状態を改めなければならない。だから日本会議は憲法改正を目標にしているのに、なぜいま The Economist がそれを批判するのか。
かつて中国は、憲法改正することで日本は軍国主義に戻ろうとしている、と言っていたが、誰が信じるか。中国でさえこの恥ずかしさに気づいて、十年ほど前から言わなくなっている。それを、The Economist が臆面もなく使っている。
他にも愛国心を子供に強制しようとしているというが、これまで国旗・国歌が軽んじられ、愛国心があまりにもなさ過ぎた。ために、愛国心くらいは教育基本法の精神として入れることを考えて実現したことが悪いのか。イギリスは愛国心を危険視し、国旗・国歌を軽んじている国なのか?
靖國参拝もけしからんと言うが、招魂社であり、「A級戦犯」も「B級戦犯」もない。「靖國で会おう」と言って戦争で亡くなった人たちの思いを、尊重したいだけである。日本の神道とは何かが全くわかっていない。
もし中国や韓国の言うように「A級戦犯」を除外すれば、次はB、C、最後には靖國神社自体をなくしてしまおう……となるのは目に見えている。外交の道具に使われていることも見抜けないのか。
The Economist のオピニオンには呆れてしまい、以後、この雑誌を読むことはやめた。
■三つの批判への反論
日本会議批判は、大きく分けると三つになる。
一つは、様々な宗教団体が入っていること。宗教団体は教祖の一存で右向け右となる団体で、それは危険ではないか、と。
様々な宗教団体が参加しているのはたしかだが、日本会議の綱領と運動方針(日本の伝統・歴史を尊重する、皇室を尊重する、憲法を改正する)に賛同する向きは個人、団体、宗教団体などに限らず入っていただいている。基本のところではコンセンサスがとれている宗教団体だけだ。むしろ、違う考えだったら参加しないだろう。
二つ目は戦前への親和性、すなわち天皇崇拝や軍国主義など、戦前の価値観へ戻ろうとしているという。
これまで、日本の国体という問題を考えたことのない人たちなのだろう。少なくとも The Economist 、NYTなどはそうだ。たとえば、私は産経新聞の「国民の憲法」を作る起草委員会の委員長だったが、一室にこもって日本の国体とはなんぞやを長時間、侃々諤々議論してきた。
要するに日本の歴史のなかで、天皇は権威であり、権力は別にあった。幼少あるいは老齢の天皇をお助けする役目として、摂政、関白の補佐役ができ、それが権力になっていった。権力は藤原氏、平氏、源氏、北条氏、足利氏、次いで織豊時代を経て江戸時代、そして明治維新になる。その間、後白河上皇、後醍醐天皇などの一時期を例外として、天皇の権威を侵す者はいなかった。万世一系の皇室を尊重するのはいけないのか。
憲法についても、日本会議は「新憲法の大綱」を過去に発表し、百地章先生と大原康男先生に解説を書いていただき、『新憲法のすすめ─日本再生のために』という本を出し、皇室尊重ではあるが、しかし立憲君主制なので、元首としての天皇の下に、実権は内閣総理大臣が握る構造を提起している。
西欧の王は征服王であり、また中国は易姓革命の国だ。天皇が祭祀王(プリースト・キング)、世界で類を見ない国民の安寧と平和を祈る王であることを理解していない。だから、皇室尊重を危険視しているのであろう。
たしかに、戦前に行き過ぎた時期はあった。しかし、戦争が近づいて社会が異常になった瞬間だけを捉えて「戦前=悪」とするのは、デマゴーグの一種ではないかと思う。
三つ目の批判は、元号法制定や国旗国歌法制定、教育基本法改正など、日本会議がこれまでやってきたことが実現しており、日本会議は大きな力がある運動団体で政府をコントロールしている、というもの。
考えていただきたいのだが、中国やロシア、北朝鮮ならともかく、日本は民主主義国家である。特定の運動団体が、国会や政治の動きを自在にコントロールできるわけがない。いくら日本会議に力があったとしても、国民を説得し、国民が納得しなければ何事も決まるわけがない。常に過半数を動かすような力などありえない。こんな当たり前のABCがわからないのだろうか。
日本会議がやってきたことが実現したというのは、わが国民の声なき声を土台に、各人が長年かけて一所懸命、無私の心でやってきた結果でしかない。もう少し違う角度からご覧になったほうがいいのではないか、とアドバイスをしたい。
■問題個所が百五十カ所
先に挙げた多くの日本会議批判本や記事のなかで、現在、際立って売れているのが、菅野完氏の『日本会議の研究』で、すでに十万部を超えているという。
ざっと内容を見てみよう。
「日本会議の淵源は谷口雅春の生長の家」
「日本会議をつくったのは村上正邦元参院議員」
「安倍首相のブレーンとも言われる日本政策研究センター代表の伊藤哲夫は生長の家の元幹部」
「百地章(憲法学者)、高橋史朗(明星大教授)ら日本会議に近い学者たちも生長の家から出た人々」
「『日本会議国会議員懇談会』に所属する国会議員が第三次安倍内閣の全閣僚十九名に占める割合は八割を超えていた」
「もはや安倍内閣は『日本会議のお仲間内閣』」
「政治家では首相補佐官の衛藤晟一などが活発に活動」
「日本会議を支えているのは佛所護念会、念法眞教、崇教真光、神社本庁、霊友会などの各種宗教団体……彼らが運動の主力」
こういう背景のもとに安倍政権が進める憲法改正を目標に活発に運動しているのが日本会議だということを、古い資料なども引用して一見、実証的(?)にレポートしている。
事務局で『日本会議の研究』を調べた結果、虚実、装飾、誹謗中傷、事実誤認、印象操作、著作権侵害、肖像権侵害、プライバシー侵害など、数えると百五十カ所以上あった。
椛島有三氏(日本会議事務総長・日本協議会会長)は直ちに扶桑社に出版停止を求め、申し入れを行った。概要を引用すると──。
《1、『日本会議の研究』は、過去の一部学生運動・国民運動体験者等の裏付けの取れない証言や、断片的な事象を繋ぎ合わせ、日本会議の活動を貶める目的をもって編集された極めて悪質な宣伝本であり、掲載されている団体・個人の名誉を著しく傷つけるものである。
2、ことに、日本会議の運営が、宗教的背景を持つ特定の人物によって壟断されていると結論付けていることは、全く事実に反している。日本会議の意思決定は政策委員会、常任理事会、全国理事会など各種役員会を通じて機関決定されており、長年にわたり本会運営に携わった役員・関係者各位への冒瀆である》
■政策実現を目指すのは当然
申し入れ書の2について触れておくと、そんな人間はどこにも見当たらない。会長、副会長、常任理事、理事と、普通の組織と同じだ。会議にしても、地方から中央に上がってきて、積みあがってきたものを常任理事会で決定する仕組みである。だから、特定の人物が壟断できる組織ではない。
日本会議の具体的活動の例として、魚住昭『証言 村上正邦』を基にしながら、「戦後五十年決議」の文案をめぐる攻防が書かれている。
最終的な決議案文面変更に怒った椛島氏らが、村上氏のネクタイを摑んで怒鳴り散らした──とあるが、これは事実に反する。椛島氏ら終戦五十周年国民委員会の役員は村上氏に呼ばれて部屋に入ったのであって、怒鳴りこんだわけでもないし、ましてやネクタイを摑んでもいない。
さらに、「戦後七十年談話」作成時に、座長代理の北岡伸一氏が「安倍首相に『日本が侵略した』と言ってほしい」と言っていたが、「『植民地支配と侵略』や『おわび』の踏襲にこだわる必要はない」と正反対のことを言い出したのは、《彼が相当の圧力──「参院の法王」(注・村上正邦)にさえ「ネクタイを摑んで」 「怒鳴り散らす」ほどの圧力──を受けたであろうことは想像に難くない》と書いている。
断定こそしていないが、「日本会議が圧力をかけた」としたいのだろう。
しかし、そんな事実は全くない。だいたい、日本会議のメンバーは北岡氏が苦手で、率先して接触したい人ではない。
他にも、昨年十一月十日に日本会議が主導した「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が開催した「今こそ憲法改正を! 武道館一万人大会」で「九条改正は語られなかった」としているのだが、櫻井共同代表は、いまの憲法では日本を守れない、と九条改正の必要性について言及している。
批判派が一番気にしているのは、多くの政治家が名を連ねていることのようだ。
しかし、我々は運動体である。国民運動を通じて政策実現を目指しているのだから、法律法令を作る地方・中央の政治家にアプローチするのは当然で、共通の目的を持った政治家が参加するのも当たり前ではないか。それは右左関係なく、全ての民間運動に言えることである。国民運動団体が政治に密着していることを批判されても、困る。
また、椛島有三氏が昭和五十二年(一九七七)に元号法制定運動の際に、《「国会や政府をゆり動かす」ため「各地に自分たちの問題として取り上げるグループを作り」 「県議会や町村議会などに法制化を求める議決をしてもらひ」 「この力をもって政府・国会に法制化実現をせま」る》という戦略をもち、これが現在の「日本会議の運動戦略」そのものだと言う。
これはそのとおりだ。しかし、それの何が悪いのか?
同じように、最高裁の天下り機関のような言い方もされているが、そんなわけがない。石田和外元最高裁長官が日本会議の前身ともいうべき組織の議長を務め、たまたま第三代会長に元最高裁長官の三好達氏がなられていたにすぎない。
■国際情勢の変化を見ろ
日本会議を批判する人たちは、憲法改正で力を発揮されては困る、という焦りから批判しているのだろう。特に昨年十一月十日の一万人大会で人が集まったので、ますますまずいと思ったのではないか。
では、憲法改正がまずいことなのか?
一万人大会に、米国のジョン・マケイン上院議員がメッセージを送ってくれた。彼の口から憲法改正を言えば内政干渉になってしまうのでそうは言わなかったが、「しっかりした日本を作ることを心から望む」というものだった。
中国の異常な膨張主義と米国の「内向き」の姿勢のなかで、「日本の憲法改正に反対するアメリカ人はいまは少ない」との話を、米国の然るべき人から聞いたばかりだ。
いまのアメリカは、猫の手も借りたいほどいっぱいいっぱいの状態である。そのため、自分の国も守ろうとしない国のために自分の子供たちの血を流してたまるか、という気持ちが高まっている。日本会議批判をする前に、日本を取り巻く国際情勢を少しは考えてみたらどうか。
アメリカはこの三十年来、自殺率が上がり、所得格差も凄まじいことになっている、アメリカンドリームはもはや「風と共に去りぬ」、そんな状態になっている。だからこそ、トランプが出てきたのである。
そんなアメリカを前にして、日本はどうするのか。仮に、トランプではなくヒラリーが大統領になったとしても結局はオバマの踏襲だから、アメリカが内向きであることは変わらない。
かつてペリー、敗戦と、日本は二度にわたる大改革を体験したが、三度目の衝撃波も太平洋の向こうからやってくるかもしれない。自分たちで考え、行動するしかない。なぜ、国際情勢に明るいはずの外国人記者の一部の人たちが憲法改正を危険な行動だと言うのか、理解できない。
昨年六月、日本外国特派員協会での記者会見でこんなやり取りがあったという。質問者は The Economist のマクニール記者。答えたのは小林節氏(『Journalism』魚住昭記事より)。
マクニール「集団的自衛権行使を合憲としている憲法学者が三人おり、彼らは全員、日本会議に属している。それは何を意味しているのか?」
小林「私は日本会議にはたくさん知人がいる。彼らに共通する思いは第二次世界大戦での敗戦を受け入れがたい、だからその前の日本に戻したい。日本が明治憲法下で軍事五大国だったときのように、米国とともに世界に進軍したいという思いの人が集まっている。よく見ると、明治憲法の下でエスタブリッシュメントだった人の子孫が多い。そう考えるとメイクセンス(理解)でしょ」
これはもう、アナクロニズムでしかない。現在の日米関係、アメリカの現状を全く見ていない。
■小さなグループの集まり
ただし、小林氏の「軍事五大国だったときのように、米国とともに世界に進軍したいという思いの人が集まっている」というのは、日本は自分の国の運命を自分で決めるプレイヤーであるべきだ、という点で当たっている。
ところが、いまは全てアメリカ頼み。防衛を放棄し、経済だけで繁栄してきた。それはそれで一つの成功だとは思うが、憲法の枠内で「孤立主義」を唱えてきた「一国中心主義」ではないか。米国と一緒に、世界に「進軍」することを本気で考えている日本人はいるのか。
戦前の軍隊と違ってシビリアン・コントロールをはっきりさせ、統帥権の独立などの解釈は絶対に生まれない体制にする。単に「戦前の日本に戻したい」などと考えている会員は一人もいないと思う。第一、そのようなことは運動の目標たり得ないのである。
以上述べたように、日本会議への批判は過大評価か的外れ。我々は「安倍政権の黒幕」などではなく、一所懸命活動している一国民運動団体でしかない。いま成果があがっているのは、長年の地道な活動の結果なのだ。奇しくも、『週刊金曜日』で魚住昭氏がこう書いている。
《日本会議の実態は小さなグループの寄り集まり》
《日本会議は戦術が巧みで、実態以上に自分たちを大きく見せるやり方がうまい。その結果、彼らがあたかも現在の日本を覆い、政治を動かしているかのような誇大イメージが現在、あちらこちらに広まっている》
そのとおり。よくわかっていらっしゃるではないか。
2月23日、皇太子殿下お誕生日に際し 「過去の天皇が歩んでこられた道」
平成29年2月23日、57歳をお迎えになられた皇太子殿下には、お誕生日に際してご会見になられました。
ここでは、
「次期皇位継承者である殿下ご自身は象徴天皇とはどのような存在であるべきか」
「皇室の現状や将来の在り方について」
のお答えの部分をご紹介します。
記者からの質問に対し、皇太子殿下は御丁寧にひとつ、ひとつをお答えになっています。私たち国民は、その御言葉をひとつ、ひとつ大切に受け止め御皇室に寄り添うことが大切であると感じました。
皇太子殿下お誕生日に際し(平成29年)
皇太子殿下の記者会見 - 質問2、質問4を掲載 -
会見年月日:平成29年2月21日
会見場所:東宮御所
* * *
問2 政府が設置した有識者会議で象徴天皇の在り方について議論が重ねられており,国民の関心も高まっています。次期皇位継承者である殿下ご自身は象徴天皇とはどのような存在で,その活動はどうあるべきとお考えでしょうか。殿下が即位されれば皇后となられる雅子さまの将来の務めについて,お二人でどのようなお話をされておられますか。
皇太子殿下
象徴天皇については,陛下が繰り返し述べられていますように,また,私自身もこれまで何度かお話ししたように,過去の天皇が歩んでこられた道と,そしてまた,天皇は日本国,そして日本国民統合の象徴であるという憲法の規定に思いを致して,国民と苦楽を共にしながら,国民の幸せを願い,象徴とはどうあるべきか,その望ましい在り方を求め続けるということが大切であると思います。
陛下は,おことばの中で「天皇の務めとして,何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが,同時に事にあたっては,時として人々の傍らに立ち,その声に耳を傾け,思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました」と述べられました。私も,阪神淡路大震災や東日本大震災が発生した折には,雅子と共に数度にわたり被災地を訪れ,被災された方々から直接,大切な人を失った悲しみや生活面での御苦労などについて伺いました。とても心の痛むことでしたが,少しでも被災された方々の痛みに思いを寄せることができたのであればと願っています。また,ふだんの公務などでも国民の皆さんとお話をする機会が折々にありますが,そうした機会を通じ,直接国民と接することの大切さを実感しております。
このような考えは,都を離れることがかなわなかった過去の天皇も同様に強くお持ちでいらっしゃったようです。昨年の8月,私は,愛知県西尾市の岩瀬文庫を訪れた折に,戦国時代の16世紀中頃のことですが,洪水など天候不順による飢饉や疫病の流行に心を痛められた後奈良天皇が,苦しむ人々のために,諸国の神社や寺に奉納するために自ら写経された宸翰般若心経のうちの一巻を拝見する機会に恵まれました。紺色の紙に金泥で書かれた後奈良天皇の般若心経は岩瀬文庫以外にも幾つか残っていますが,そのうちの一つの奥書には「私は民の父母として,徳を行き渡らせることができず,心を痛めている」旨の天皇の思いが記されておりました。災害や疫病の流行に対して,般若心経を写経して奉納された例は,平安時代に疫病の大流行があった折の嵯峨天皇を始め,鎌倉時代の後嵯峨天皇,伏見天皇,南北朝時代の北朝の後光厳天皇,室町時代の後花園天皇,後土御門天皇,後柏原天皇,そして,今お話しした後奈良天皇などが挙げられます。私自身,こうした先人のなさりようを心にとどめ,国民を思い,国民のために祈るとともに,両陛下がまさになさっておられるように,国民に常に寄り添い,人々と共に喜び,共に悲しむ,ということを続けていきたいと思います。私が,この後奈良天皇の宸翰を拝見したのは,8月8日に天皇陛下のおことばを伺う前日でした。時代は異なりますが,図らずも,2日続けて,天皇陛下のお気持ちに触れることができたことに深い感慨を覚えます。
私がここ10年ほど関わっている「水」問題については,水は人々の生活にとって不可欠なものであると同時に洪水などの災害をもたらすものです。このように,「水」を切り口として,国民生活の安定,発展,豊かさや防災などに考えを巡らせていくこともできると思います。私としては,今後とも,国民の幸せや,世界各地の人々の生活向上を願っていく上での,一つの軸として,「水」問題への取組を大切にしていければと思っております。
また,私のこうした思いについては,日頃から雅子とも話をしてきており,将来の務めについても話し合っていきたいと考えております。
問4 皇族方の減少や高齢化が進む中,皇室の現状や将来の在り方についてどのようにお考えでしょうか。両陛下の負担軽減や皇族方による公務の引継ぎ,分担についての殿下のお考えもお聞かせください。
皇太子殿下
皇室の現状についての御質問ですが,男性皇族の割合が減り,高齢化が進んでいること,また,女性皇族は結婚により皇籍を離れなければならないということを前提とした場合に,皇族が現在行っている公務をどのように引き継ぎ,どう分担していくべきかという点は,将来の皇室の在り方とも関係し,大切な問題であると思います。そして,皇室の将来の在り方に関しては,私は,以前にも申しましたけれども,その時代時代で新しい風が吹くように,皇室の在り方もその時代時代によって変わってきていると思います。過去から様々なことを学び,古くからの伝統をしっかりと引き継いでいくとともに,それぞれの時代に応じて求められる皇室の在り方を追い求めていきたいと考えております。
公務の引継ぎや分担につきましては,お仕事の一つ一つを心から大切にしてこられた陛下のお気持ちを十分に踏まえながら,私を始め,皇族が適切に役割を担っていくことが重要であると思います。一昨年から,こどもの日と敬老の日にちなんでの施設訪問を両陛下から秋篠宮と共に受け継がせていただきましたし,昨年は,小中学校長の拝謁及び国際緊急援助隊・国際平和協力隊の接見を私が引き継がせていただくことになりました。また,昨日まで,陛下の名代として第8回アジア冬季競技大会の開会式に出席するため,北海道を訪れておりました。私としては,今後とも,引き継がせていただいた公務を大切に務めながら,少しでもお役に立つことがあれば,喜んでできる限りのお手伝いをしてまいりたいと思っています。
なお,皇室の制度面の事柄については,私が言及することは控えたいと思います。
全文はこちらより
(宮内庁ホームページ) http://www.kunaicho.go.jp/page/kaiken/show/9
日本会議の機関誌「月刊日本の息吹3月号」紹介
月刊「日本の息吹」は、「日本会議」が発行する機関誌です。誇りある国づくりをめざすオピニオン誌として、新しい視点で明日の日本の進路と、日本再発見を提言します。
目次
●グラビア
●今月の言葉/藤井厳喜
●フォトグラフ
● 天皇陛下のご譲位と法制度の在り方/百地章
●「国難災害」と憲法改正/河田惠昭
●熊本地震災害お見舞いのご報告
●[連載]子育て支援塾/田下昌明
●特集「慰安婦」歴史戦を戦い抜け!
・釜山慰安婦像と韓国版自虐史観/西岡力
・朝日・グレンデール訴訟報告会
・最終準備書面(前編)/德永信一ほか
●[連載]コーシンの世相談義/髙信太郎
●息吹のひろば
注目記事
■ 天皇陛下のご譲位と法制度の在り方
講師 百地章 国士舘大学院客員教授
「有識者会議」の「論点整理」が出された。ここで、論点を整理し、慎重かつ賢明な結論を導き出す参考に供したい。
■「国難災害」と憲法改正
講師 河田惠昭 関西大学社会安全研究センター長
憲法改正など当り前!というほどの国民意識にまで高めないと、とても「国難災害」を乗り越えることはできない―巨大災害の権威が語る「憲法に緊急事態条項を」
特集「慰安婦」歴史戦を戦い抜け! 朝日・グレンデール訴訟報告会
■4月27日判決へ!!朝日新聞に、海外メディアへの訂正・謝罪広告の掲載を求める裁判が結審!
全国の息吹~北から南から~ 2月(如月)
岐阜
■ 岐阜県が18回会員大会
昨年12月4日、稲田防衛大臣のビデオ講演で会員大会を開催。衆議院議議員の古屋圭司会長が挨拶。
■ 22回目の21世紀国創りフォーラム
昨年12月18日、講師に葛城奈海氏を招き「女性が語る日本文化」と題して22回目のフォーラムを開催。
愛知
■ 放送法の遵守を求める講演会
1月22日、テレビメディアの偏向報道の是正をめざし、AJCN代表の山岡鉄秀氏が講演。
広島
■ 第5回皇居勤労奉仕団派遣
昨年11月14~17日、広島県本部は40名による皇居勤労奉仕団を派遣、5回目を迎えた。
■ 広島県本部が新年互礼会
1月14日、広島県本部では「新たな一年の展望を切り開こう」と平成29年新年の抱負を語り合った。
長崎
■ ミサイル艦の入港歓迎活動
昨年11月2日、長崎県本部は海上自衛隊のミサイル艦「おおたか」の長崎港入港を歓迎する活動を展開。
兵庫
■ 元司令官が語る海の守り
11月19日、兵庫県西宮・芦屋支部は元自衛隊司令官の道家一成氏を講師に招き「日本の海の安全」をテーマに講演会を開催。