新春対談 ”トランプ・ショック”と日本の覚悟 (田久保忠衛日本会議会長×古森義久氏)
田久保 忠衛 たくぼただえ 日本会議会長・杏林大学名誉教授 |
古森 義久 こもりよしひさ × 産経新聞ワシントン駐在客員特派員 麗澤大学特別教授 |
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田久保
ドナルド・トランプ氏の勝利は驚きをもって受け止められていますが、私がまず思ったのは、ヒラリー・クリントン氏でなくてよかったなということでした。彼女が勝利していたらアメリカの政治は危機に瀕していたかもしれない。まず健康状態がひとつ。次に私利私欲にまみれたクリントン財団の問題。ここには中国系その他のダーティマネーが入っていたと言われている。そして、メールの公私混同問題。これは国家の安全保障に直結する。FBIの捜査対象の可能性のある人物が4年間大統領の椅子に座っていたらどうなるか。共和党が多数を取っている下院から大統領への弾劾決議が出たはずです。実際、クリントン氏が勝利したとしたらその瞬間に弾劾が発議されるという噂が流れた。もし私が中国の習近平なら弾劾と同時に尖閣諸島に武装漁民を入れたかもしれない。そのときアメリカも日本も手の打ち様がない。4年間の任期中、大統領が国内の野党勢力に脅されっぱなしになり、リーダーシップを発揮できずに、超大国アメリカがガタガタになっていた可能性がある。それにしても、米国の戦後史に大統領選で、互いの私行をこれだけ激しく暴き合う例があったかどうか。アメリカのモラルの低下をもたらしました。
古森
しかもクリントン氏の支持派のなかには、いまだに選挙結果を認めない人々がいる。まるでアナキズム(無政府主義)じゃないですか。
田久保
とはいえ、トランプ氏でよかったと手放しで喜べるものでは決してない。上下両院を与党(共和党)が占める強力な権限を持つ大統領が誕生することとなった。政策論争が少なかっただけに、トランプ氏の政策の方向性は、ほとんど未知といっていい。「米国第一主義」「孤立主義」「保護主義」などいくつかの断片的なキーワードはある。これらがそのまま実行されればアメリカの衰退は確実だが、果たしてどうなるかは誰にも分からない。なぜこうした無謀なことを言ってもトランプ氏が支持されたのか。それは米国内だけでなく、国際社会、ことに欧州の動きと無関係ではない。そこでまず、この世界的な動きについて私の見方をお話ししたい。今の国際情勢を私は三つの観点から見ています。
ひとつは、冷戦後いろいろな経過をたどった結果、どうやら価値観で分けられるような対立の構図が見えてきた。自由、法治、人権など普遍的価値観を共有する国々と、そうではない国々と。後者はロシア、中国、北朝鮮、イランなどが代表的な例でしょう。二つ目は、戦後の国際システムが帰着したところのグローバリゼーションに対するノーの動きが起こってきたことです。欧州ではイギリスがEUからの離脱を決定した。ブリュッセルにいるユーロクラートというEUの国際官僚が仕切って加盟国に指令を送ってくる。例えば移民、難民政策という、本来はイギリスの議会が決めるべき問題に対してブリュッセルが口出しをしてくる。つまりイギリスの主権とぶつかったわけです。イギリスに限らず欧州各地で移民、難民の増加に象徴されるグローバリズムへの不満が高まっている。三つ目は、国際政治学は国家と国家の関係を論じてきたけれども、まったく別のプレイヤーが現れたということです。9・11米同時多発テロ以降、続出してきた国際テロリストが、いまISを始め各地でテロを起こして各国の秩序を揺るがしている。フランス、イギリス、ドイツ、インド、パキスタン、そして南アジア、東南アジアに至るまで全世界的に波及しています。以上、三つが今日の国際情勢の特徴だと思います。そういう情勢を背景として、米国にトランプ氏が登場したと理解しています。
古森
今のお話と重なる部分もありますが、長年、現地でアメリカウオッチをしてきた立場から、アメリカの状況について述べたいと思います。グローバル化の行き過ぎに対する反発、主権国家の「主権」に対する見直し。この二つの流れがトランプ現象の背景にあります。グローバリゼーションで象徴的な問題は一つが移民、難民、ことに不法移民の増加であり、もう一つがテロの脅威です。外交面でいえば、マルチラテラリズム(多国主義)の問題がある。物事は二国間ではなく多国間で進めて行きましょうと。オバマ政権はこれが好きだった。一方で、主権国家の主権ということがあまり好きでなかった。世界に対して普遍的価値観を投射してその普及拡大に努めて行こうというアメリカの伝統的なやり方が嫌いだった。ファウンディング・ファーザーズという建国の父たちがいて、キリスト教にいた自由、競争、メリトクラシー(実績主義)によるアメリカンドリームを追い求めていくアメリカが嫌いだった。逆にオバマ大統領はこういうアメリカらしい価値観を否定し、競争して勝ち負けを競うのではなく、平等な社会に重きを置く社会主義的な政策を採った。このままでは、アメリカがアメリカでなくなるという、オバマ政権の超リベラル政策への反発がアメリカ国民の間に高まって行った。国家という人間だけが営むことの出来る存在なくしては人間は生きていけないという現実に国民が回帰し始めた。実は、2001年の9・11のときも同じような流れがありました。ブッシュ(ジュニア)政権でしたが、3千人が殺されて、テロの頻発、ことに細菌兵器への危機感が高まった時に、やはり国民そして社会を助けるのは主権国家なんだと。
例えば、世界貿易センタービルが破壊されたときまず出動したのは消防署であり、仮にバイオ兵器が使われたならば、まず動くのは保健所であり、軍の特殊部隊である。医療機関などの民間はその後にくる。つまり公という意味での主権国家こそが国民を守ってくれるのだという意識が高まった。ところが、そのブッシュ政権がイラクなどでやりすぎて、バラク・オバマの時代となった。それから8年間経てトランプの時代となる。ですからトランプ現象とは何かを一言でいえば、「オバマ否定」なのです。8年間オバマ大統領が体現してきたものを少なくとも選挙中のトランプ氏はすべて否定してきました。超大国アメリカの振り子が左に触れていたのが、真ん中に戻ってきて、これから右に触れるだろうという局面にきているのだと思います。オバマ氏が体現してきた少数民族や貧困層、移民などへの優遇策はクリントン氏が当選していたら引き継がれていた。彼女は不法移民も含めて1100万人はそのままでいいと言ってきた。そこでそのような移民流入の流れという方向の振り子はそのまま振れたままでいるのかもしれないと私は観察していました。ところが、やはりそうじゃなかった。貧困層、移民への援助の原資は、自分達が払っている税金だと中間層の不満は頂点に達していた。それが振り子を元に戻そうとしたのです。この超大国アメリカで起きた変化がこれから国際情勢にどういう影響を及ぼすのか。私は、百年に一度のパラダイムシフトが起きるかもしれない、そういう歴史的転換点のような気がしています。
(日本の息吹平成29年1月号より 平成28年11月15日対談)
【動画】世界の憲法からみる日本国憲法 (駒澤大学名誉教授 西 修)
平成28年5月3日、第18回公開憲法フォーラム「各党に緊急事態に対応する憲法論議を提唱する ― すみやかな憲法改正発議の実現を!」と題して開催された。
この動画では、駒澤大学名誉教授・民間憲法臨調運営委員長である西修先生の講演映像の一部を公開しています。(映像提供 民間憲法臨調 美しい日本の憲法をつくる国民の会)
内容 世界各国の憲法と日本国憲法の比較
世界各国の憲法と緊急事態条項
立憲主義と緊急事態条項
西先生は、「世界の憲法を知るということから、憲法論議を始めていこう!」と提言されています。また、「日本国憲法は世界で唯一の平和憲法」という声もありますが、西先生は実際に世界各国の憲法を調査され、分かり易く客観的に数字を上げることで「本当に世界で唯一なのか」ということに答えています。そして、現在日本国憲法には世界で常識とされる緊急事態条項がありません。緊急事態条項を設けることの意義も分かりやすくご説明されています。(日本の息吹 平成28年7月号より)
全国の息吹 ~北から南から~ 12月
■和歌山県
近畿ブロック大会開催
10月31日、近畿ブロック第3回大会を開催。ケント・ギルバート氏が記念講演。
■北海道
パネル展岩見沢で開催
10月8~9日、先日の旭川に続き、岩見沢にて、「従軍慰安婦」パネル展を実施。
■宮崎県(延岡)
「日本国憲法の不思議」
10月2日、延岡支部主催にて、ケント・ギルバート氏の特別講演会を開催した。
■愛媛県(八幡浜)
八幡浜支部総会開催
10月4日、八幡浜支部総会が開催。総会後、憲法改正ドキュメンタリーDVDを上映。
■広島県(広島中央・西)
杉原誠四郎氏講演会
10月6日、広島中央・広島西の2支部と県本部の合同で杉原誠四郎氏の講演会を開催。
■大阪府(泉州)
「どうする日本!」
10月15日、前衆議院議員三宅博氏による特別時事講演会が開催された。
■東京都・(3支部合同)
高山正之氏講演会
10月15日、立川、国立・国分寺、西多摩の3支部合同で高山正之氏講演会を開催。
■神奈川県(横浜)
百田尚樹氏が講演
10月22日、設立10周年記念大会を開催。放送作家・小説家の百田尚樹氏が講演。
■京都府・(京都北)
第2回憲法改正学習会
10月22日、綾部と福知山で第2回憲法改正学習会を開催。一色正春氏と丸山美和子氏が講演
天皇皇后両陛下、岩手県、京都府を行幸啓
岩手
天皇皇后両陛下、岩手県を行幸啓
子供たちと一緒に奉迎
天皇皇后両陛下には、9月28日から10月1日にかけて、「いわて国体」開会式へのご臨席と被災地の復興状況ご視察のため、岩手県に行幸啓
になった。沿道には、岩手県神社庁が主体となって、集まった人々に日の丸小旗を配布、横断幕で奉迎活動を行った。
▲各所には、両陛下をお迎えしようと小さな子供たちも掛け付けた。
京都
天皇皇后両陛下、京都を行幸啓 各所で奉迎活動を実施
天皇皇后両陛下には、10月23日から26日にかけて、「国際外科学会世界総会」開会式へのご臨席のため、京都を行幸啓になった。駅の
周辺には大勢の京都府民が参集。日本会議京都や京都府神社庁が主体となって、日の丸小旗を振っての奉迎活動を行った。
日本会議の「新憲法の大綱」について
日本会議の「新憲法の大綱」について
日本会議は、前身の「日本を守る会」「日本を守る国民会議」以来、一貫して「憲法改正」「新憲法制定」を提唱してきました。
平成3年6月、日本を守る国民会議は冷戦終結後の内外情勢の変化を受けて「新憲法制定宣言」を発表しました。その後、2年間の研究活動を経て平成5年に「新憲法の大綱」を発表し、徳間書店から『新憲法制定宣言』を刊行しました。
平成7年から「新憲法研究会」を設置し引き続き研究活動を行い、平成13年には、改訂した新憲法大綱を明成社から『新憲法のすすめ』として発刊しています。
平成19年、国会で「国民投票法」が成立し、憲法改正は関連する条文ごとに発議されると定められたことから、日本会議は現在、テーマごとに改正の必要性を提言しています。
ここに、本会の憲法改正案の骨格を示すため、改めて「新憲法の大綱」全文を掲載いたします。
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●新憲法制定宣言
現行憲法は、その不幸な制定経過のため、我が国の伝統に基礎を置かず、自虐史観の論理で占められ、日本を自主独立国家として規定していない。その結果日本国民は、内には祖国への誇りを失い、外には国際社会から軽侮と不信を受け続けてきた。しかし、冷戦は終結し、世界は新たな時代を迎えた。我が国はもはや、国家意思を曖昧にしたまま、世界の傍観者であり続けることは許されない。
今こそ日本は、固有の国柄を明らかにし、かつ国際責任を果たすべく、国家の基本法たる憲法を根源的に問い直すときに来ている。それは、我が国の悠久の歴史をつらぬく伝統に基づき、新しい国際時代を切り開く新憲法を制定することである。
我らは、近代日本の礎を築いた先人の偉業を継承する中で、国際社会の平和と協調互恵の実現、自然と人類の共存共栄を希求し、国家の自主独立の精神と祖国愛にあふれた崇高な理念を基調とする新憲法の制定を決意する。
かくして、日本国民が自らの意志によって新憲法を制定するとき、現行憲法体制は終焉し、祖国日本は、国際社会から尊敬と信頼を得る国家に新生するであろう。ここに我らは新憲法制定を内外に表明し、その実現に向けて力強く国民運動を展開することを宣言する。
平成3年6月16日
日本を守る国民会議
(この宣言は、平成3年6月に開催された本会の第10回総会において、我々がめざすべき憲法構想を研究・作成し、新憲法制定運動を開始する旨を宣言したものです。)
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●新憲法の大綱
日本会議新憲法研究会
一、前 文
我々日本国人は古来、人と人との和を尊び、多様な価値の共存を認め、自然との共生のうちに、伝統を尊重しながら海外文明を摂取・同化することにより独自の文化を築き、天皇と国民が一体となって国家を発展させてきた。
我々は、このような我が国固有の国体に基づき、民意を国政の基礎におく明治以来の立憲主義の精神と歴史を継承発展させ、国民の自由と権利を尊重するとともに国家の一員としての責任を自覚して新たな国づくりへ進むことを期し、併せて世界の平和と諸国民の共存互恵の実現に資する国際責任を果たすために、この憲法を制定する。
二、天 皇
我が国の歴史をふまえ、天皇の地位と権能を明確にする
(1)日本国は立憲君主国である。
天皇は日本国の元首であり、日本国の永続性及び日本国民統合の象徴である。
(2)天皇は元首として、内閣の補佐に基き左の行為を行う。
1、内閣総理大臣の任命
2、衆議院及び参議院議長の任命
3、最高裁判所長官の任命
4、憲法及び皇室典範の改正、並びに法律及び政令の公布
5、条約の批准並びに公布
6、国会の召集及び衆議院の解散
7、衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行の公示
8、国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免
9、全権委任状及び外交使節の信任状の授与
10、外交使節の接受
11、栄典の授与
12、元号の制定
13、恩赦
14、儀式
(3)天皇は伝統に基く祭祀、儀礼その他象徴にふさわしい行為を行う。
(4)天皇の行為については内閣が全て責任を負う。
(5)元首及び象徴の尊厳は守られるべきことを明記する。
[今後の検討事項]
1、皇室典範の整備(践祚(ぜんそ)及び大嘗祭、皇族の監督権等について明記し、皇統についても触れる。なお皇室典範は法律ではあるけれども、その改正のためには皇室会議の審議を要するものとし、皇室が実質的に関与することによって一般の法律とは異なる扱いをする)。
2、皇室経済法の整備(相続税の適用除外等の明記)。
3、宮内庁の位置づけの再検討。
4、その他皇室関連法規の整備。
三、防 衛
正義と秩序ある平和の追求を宣言するとともに、国軍の保持並びに国軍に対する政治優位の原則を明記する
(1)我が国は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国際条約を遵守して、国際紛争を平和的手段によって解決するよう努める。
(2)我が国の安全と独立を守り、併せて国際平和に寄与するため、国軍を保持する。
(3)国軍の最高指揮権は、内閣総理大臣が行使する。
(4)国軍の指揮及び編制は、法律で定める。
四、国際協力
我が国の国際社会に対する積極的な寄与を目指し、新たに、「国際協力」の章を設ける
(1)我が国は、各民族及び各国家の共存共栄の精神に基づき、次に掲げる 目的の実現のための積極的な国際協力を行う。
1、自由で公正な国際経済社会の実現。
2、自然保護と産業開発の調和、各国の自助及び応分の負担を原則とする地球環境の保全。
3、世界的規模での文化財保護その他固有の民族文化の復興。
五、国民の権利及び義務
現代国家にふさわしい新しい権利を採用するとともに、現行の権利及び自由について補正する。加えて具体的人権と公共の福祉との調和をはかる。
(1)憲法で定める自由及び権利は、国政上、最大限尊重されなければならない。同時にそれは、権利の濫用の禁止、他人の権利の尊重及び公共の福祉の実現のため制限され得る。
(2)自由を享受し、権利を行使するに当たっては、自助努力と自己責任の原則に従うとともに、公共の福祉の実現のために努力する責任を負う。
(3)現代国家にふさわしい新しい権利や義務規定を採用する。
(4)情報に関する新しい権利と義務の規定を新に設ける。
1、国民は法律の定めるところにより、政府及びその機関の有する情報の開示を求める権利を有する。但し、国防・外交・公安上の機密情報及び企業、個人の秘密に関わる情報及びその公開が公共の福祉を害するおそれがあるとして法律で定める情報については、国はこれを保護する義務を負う。
2、個人の秘密に関わる情報は、保護されなければならない。但し、国の安全を害する場合、犯罪捜査、税務調査その他法律で定める場合を除く。
(5)環境に関する権利と義務を新たに規定する。
1、国民は、健康で文化的な生活を維持するため、公共の福祉に反しない限度において良好な自然環境を享受する権利を有する。
2、国民は自然環境を保護し、将来の国民にこれを伝えるよう努めなければならない。
(6)国民の義務として、教育を受ける義務、納税の義務に加えて、新たに遵法義務及び国を守る義務を明記する。
(7)信教の自由を保障するとともに、国及びその機関が、特定宗教を布教・宣伝し、並びにそのための財政的援助をしてはならないこと、また宗教団体による政治支配を禁止する旨を明記する。
(8)表現の自由は、最大限尊重されなければならない。但し、個人の名誉の保護、青少年の保護その他公益上の必要のため、法律の定めるところにより国はこれに制限を加えることができる。
(9)婚姻における個人の尊重及び両性の平等とともに、国は国家・社会の存立の基盤である家族を尊重、保護、育成すべきことを明記する。
(10)教育は、この憲法の前文に掲げられた理念を基本として行われるべきこととともに、学校教育に関する国家の責任を明記する。
(11)財産権については、国土の公共性を明らかにするとともに、国民の財産権と、国土の利用及び自然環境の保護との調和をはかることを明記する。
(12)本大綱に掲げる権利、義務のうち、国家構成員たる国民に固有のもの以外は、原則として外国人にも適用する。
六、国会及び内閣
国会と内閣については、抜本的な見直しを行い、国政の刷新をはかる
(1)現代国家の要請に応えるべく、国会と内閣について新たな役割分担を考え、統治機構の再構築をはかる。
1、国会の「最高機関性」を見通す。
2、内閣および内閣総理大臣の権限を強化する。
(2)「権威の府」としての参議院の独自性を発揮させるべく、左の点において現行の二院制を抜本的に見直す。
1、議員の選出方法
2、憲法上の権限
3、運用上の配慮
(3)憲法に政党条項を設け、政党は国民の政治的意思の形成に協力し、その結成及び活動は自由であること、並びに政党の組織及び運営は民主的でなければならないことを明記する。
[補足事項]首相公選制について
首相公選制については、検討の結果、これを採用しないこととした。
七、司 法
憲法訴訟を専門に扱う部門を、最高裁の中に設置する
(1)憲法訴訟の続出と裁判の遅滞に対処し、憲法解釈の統一をはかるべく、最高裁の中に憲法訴訟を専門に扱う部門を設置する。
(2)最高裁の裁判官の国民審査制度については、新憲法ではこれを採用しないこととする。
八、地方自治
中央集権を是正し、地方自治の活性化をはかる。
(1)地方自治の本旨を明らかにし、行政の広域化に対処するために、地方自治体の再編と権限の再配分をはかる。
九、 非常事態
非常事態については、新たに以下のような規定を設ける
(1)我が国が外国から武力攻撃を受け、またはその危険が切迫している場合、及び内乱・騒擾(そうじょう)、大規模自然災害等の非常事態が生じた場合、内閣は国会の事前又は事後の承認のもとに、政令により、非常事態宣言を発することができる。非常事態においては、国軍の出動を命じ、及び法律に定めるところにより、非常事態が解消されるまで一定の権利の制限を行うことができる。事後の承認が得られなかった時、また非常事態が終了したと認められた時は、政府は解除宣言を発しなければならない。
(2)右の非常事態及び経済恐慌その他の緊急やむを得ざる事態において、国会が閉会中のときには、内閣は緊急命令と緊急財政処分の命令を制定することができる。緊急命令と緊急財政処分の命令は、すみやかに国会の事後承認を得るものとする。事後承認が得られなかった時、また緊急やむを得ざる事態が終了したと認められた時は、政府は失効宣言を発しなければならない。
十、憲法改正
(1)憲法改正は、国会または内閣が発議し、衆参両院の総議員の五分の三以上の賛成を必要とする。
平成5年5月3日 公表
平成13年2月11日 改訂
天皇陛下の「象徴としてのご公務のあり方について」のお言葉を受けて(平成28年10月18日)
天皇陛下が8月8日にお示しになった、象徴としてのご公務のありかたについては、本会としては、お言葉に示された主旨を重く受け止めております。
既に政府の方向性については、さまざまな報道がなされているところですが、現在は有識者会議の議論が開始されたばかりであり、本会として、具体的な結論を出しているわけではありません。
本会としては、どのような方向性で陛下の御心に適う方策があるかについて、今後、有識者会議及び政府の検討の推移を冷静に見守ってまいります。
尚、7月の報道以降、日本会議に参画する学者・文化人の方々が、皇室制度のあり方について発言されていますが、いずれも個人としての発言であり、本会の見解をあらわしたものではありません。
日本会議報道における虚偽・誤解・偏見に関する反論
日本会議に関する最近の一連の報道について
―日本会議報道における虚偽・誤解・偏見に関する反論―
日本会議広報部
最近、日本会議に関する新聞・週刊誌の報道や、書籍等の出版がにわかに活気づいている。
しかし、残念ながらこれらの報道や出版物には、日本会議の運動の歴史的な経緯や一次資料を踏まえることなく安易な陰謀論に陥ったり、一面的な批評に止まっていたりするものが少なくない。
私達の運動は、戦後見失われようとしてきた伝統文化を守り、日本を取り巻く厳しい国際環境の変化の中で、自立した対等な独立国家としての矜持を持った国づくりを目指した国民運動を推進してきた。
特に、近年の北朝鮮による拉致事件や工作船の活動、核・ミサイル開発、中国による南シナ海や尖閣諸島周辺での勢力拡張や威嚇、米国の内向きの姿勢は、国民の間の危機意識を高めていると考えられる。日本会議への共感や支持の拡大は、このような国民意識の変化に後押しされている点と無関係ではないだろう。
ここでは、私たちの活動を子細にご紹介する機会はないが、昨今の報道・出版の虚偽、誤解、偏見などにつき簡単に反論を加えておきたい。
■なぜこの時期に、これほど多くの報道や出版がなされたのか
今回の参院選は、当初から憲法改正の国会発議を可能とする3分の2の勢力が確保できるか否かが大きな注目を集めていた。7月の参院選に向けて報道が過熱した背景には、改憲勢力3分の2の確保を何としても阻止したいという勢力の意図が見て取れる。
特に安倍政権は、第二次政権の発足以降、高い支持率を維持している。
これらの出版物に通奏低音のように流れているのは、安倍政権を支えているのは日本会議であり、日本会議は「戦前回帰」「歴史修正主義」の「宗教右派(カルト)」とのレッテルである。このようなレッテルを貼ることにより、有権者への不安感を煽り、野党勢力の挽回拡大を狙ったものと考えられる。
■安倍首相と日本会議の関係
日本会議には、友好団体として日本会議国会議員懇談会(超党派の国会議員連盟)があり、活動している。
この超党派議連は、平沼赳夫衆議院議員を会長とし、自民党、民進党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党などの所属議員約290名が加盟されている。国会議員懇談会は独自の活動を行うとともに、日本会議から民間の請願を受け取り、国政について広く意見交換を行う存在となっている。
第二次安倍政権発足以降、安倍総理始め閣僚の多くが懇談会に所属し影響力を及ぼしているといった報道があるが、果してそうであろうか。
民間団体の日本会議は、政府や政党に対して政策提言や要望書、国会請願署名を提出することがある。これは、憲法に保障された請願権の行使である。
私達は、確かに広報活動や各種行事開催などの国民運動を全国で繰り広げ、世論を盛り上げ、そして政府や国会を後押しし、法律や政策実現をめざしている。しかし一部報道に散見される、日本会議の方針に基づいて党や政府の政策が立案されているという指摘は、日本会議の影響力をあまりにも高く評価し過ぎており、現実にはそのようなことはありえない。
■日本会議は、「帝国憲法復元」を目指していない
昨今の報道・出版物の多くに共通しているのが、日本会議が「帝国憲法復活」を目指しているという言説である。これは日本会議が戦前回帰を目指しているとする悪質なプロパガンダに他ならない。
日本会議は、その前身の「日本を守る会」「日本を守る国民会議」結成以来、40年間一貫して「憲法改正、新憲法制定」を訴えてきた。「日本を守る国民会議」は平成3年(1991年)に「新憲法制定宣言」を公表し、新憲法制定運動を提唱、平成5年(1993年)に大枠をまとめた『日本国新憲法制定宣言』(徳間書店)を公刊した。以後、日本会議内部に「新憲法研究会」を設置して「新憲法の大綱」の研究活動を重ね、平成13年(2001年)には『新憲法のすすめ』(明成社)として公刊している。
これらの略史はホームページにすでに公開済みであるが、過去・現在において、帝国憲法復元を運動方針に掲げたことは一切ない。
■日本会議と宗教団体の関係
こうした「帝国憲法復活」といった分析が出てくる背景の一つが、「日本会議」の前身、「日本を守る会」の構成団体の一つ「宗教法人生長の家」との関係だ。
その前に、日本会議と宗教団体の関係について明らかにしなければならないだろう。
日本会議には、神道系、仏教系、キリスト教系などの沢山の宗教団体や社会教育団体、各種団体等が運動に参画している。
「日本を守る会」が昭和49年に設立に際して、次のような逸話が残されている。「日本を守る会」結成の発起人の一人である臨済宗円覚寺派の朝比奈宗源管長が伊勢神宮を訪れた折、「お前たちは世界だ人類だと、上ばかり見て騒いでいるが、足許を見よ、いま日本は、ざらざらと音を立てて崩れているではないか」との思いが脳裏をかすめ、「目が覚める思いだった。わしゃぁお伊勢さまから叱られたよ」と、同管長は述懐されている。
この思いが、神社界、仏教界、キリスト教界など、同憂の複数の宗教団体、有識者、文化人に広がり、当時、影響力を増していた唯物思想や共産主義思想から日本の伝統文化を守ろうと、信仰や思想信条の垣根を越えた大同団結が実現した。
このように、それぞれの団体の教えや国家観、歴史観と、「日本を守る会」の理念が一致し、それぞれの団体が活動に協力され今日に至っているのである。以上の経緯からしても、日本会議やそこに参画している教団がカルト集団だという指摘は、全く的外れな批判であることはいうまでもない。
■生長の家は30年以上前に脱会
「生長の家」との関係についても一言しておきたい。
「日本を守る会」の結成以後、生長の家の創始者谷口雅春氏は、会の代表委員を務め、昭和天皇御在位50年祝賀行事や元号法制化などの国民運動に尽力し、その後、昭和56年の「日本を守る国民会議」結成以後、国民運動に協力されてきた。
しかし、同教団は昭和58(1983)年に政治活動や国民運動を停止し、日本会議の前身である「日本を守る会」「日本を守る国民会議」から脱会した。以後30年以上、本会とは交流が全くない。同教団からの指導、影響が及ぶことはありえない。
一部報道では、元信者が日本会議の運営を壟断しているという指摘がある。
しかし、日本会議の活動において、特定宗教の教義に影響され運動が展開されるということは全くあり得ない。日本会議は極めて民主的に運営されており、さまざまな運動方針や人事は、規約に則り政策委員会、常任理事会、全国理事会など役員会の審議を経て、決定・推進されているのである。
■日本会議は何を目指した団体なのか
それでは日本会議は、何を目指して活動しているのか。私たちは、「誇りある国づくり」を合言葉に、以下6点の基本運動方針を掲げている。
1、国民統合の象徴である皇室を尊び、国民同胞感を涵養する。
2、我が国本来の国柄に基づく「新憲法」の制定を推進する。
3、独立国家の主権と名誉を守り、国民の安寧をはかる責任ある政治の実現を期す。
4、教育に日本の伝統的感性を取り戻し、祖国への誇りと愛情を持った青少年を育成する。
5、国を守る気概を養い、国家の安全を保障するに足る防衛力を整備するとともに、世界の平和に貢献する。
6、広く国際理解を深め、共生共栄の実現をめざし、我が国の国際的地位の向上と友好親善に寄与する。
この方針に基づき、私たちは過去さまざまな国民運動に取り組んできた。
天皇陛下御即位20年など皇室のご慶事奉祝行事、元号法・国旗国歌法の制定運動、教育基本法の改正運動、戦歿者英霊への追悼感謝活動、自衛隊海外派遣支援活動、尖閣諸島等の領土領海警備強化の活動、そして、憲法改正運動である。
現在の日本社会には、サイレントマジョリティーという顕在しない良識派の多数意志が伏在している。実は日本の文化・伝統は、こうした良識派意志によって支えられ守られてきたのではないだろうか。しかし、これは顕在化しないかぎり力にならない。私たちの国民運動は、こうした世に現れていないサイレントマジョリティーを形に表し、民主的な手続に基づいて法律や行政などの政策を実現することを目標としている。
いよいよ、憲法改正の国民運動が本格化してきた。まさにサイレントマジョリティーの真価が問われる秋といえる。
■憲法審査会の論議の活性化を
今回の参議院選挙において、日本国憲法施行後初めて憲法改正に前向きな政党により3分の2が確保され、衆・参両院で憲法改正発議が可能となった。
各党はこの民意を厳粛に受け止め、速やかに国会の憲法審査会の審議を再開し、改正を前提とした具体的な論議を加速させるべきである。
与野党各党におかれては、国会の憲法審査会において、日本の将来を見据えた活発かつ真摯な憲法論議を繰り広げられることを期待する。
制定以来70年、現行憲法は国民の意志で選択する機会を失われてきた。国民投票の機会を得て、今こそ憲法を国民の手に取り戻す好機を迎えているといえよう。
第30回 戦歿者追悼中央国民集会「声明」
8月15日、靖國神社参道の特設テントにて、第30回戦歿者追悼中央国民集会が開催されました(英霊にこたえる会・日本会議共催)。
この日、集会には1,600名の人々が集い、「声明文」が採択され、憲法改正など国民運動の前進が誓われました。
声 明
今日、我々が享受している平和と繁栄は、幕末維新期から先の大戦に至るまで、祖国存亡の危機に際してかけがえのない一命を捧げられた、ここ靖國神社に鎮まります二百四十六万余柱の英霊による献身殉国の尊い御業によって築かれたものである。
にもかかわらず、戦後日本は、戦勝国の立場から過去の日本の行為を一方的に断罪した東京裁判史観を払拭できず、語り継がれるべき英霊の名誉を冒涜し、さらに「平和主義」なる美名のもとで我が国の主権と国民の生命・財産を守るべき国家としての責務を軽んずる悪しき風潮が長らく蔓延してきた。
周知のように、昨今の我が国をとりまく国際環境の激変は、かつては予想だにしなかったほどのものがある。すなわち、中国は、我が国固有の領土である尖閣諸島周辺海域への領海侵犯を繰り返し、南シナ海では国際社会から発せられた非難を無視して軍事力を増強し続けている。また、北朝鮮は、盟邦であるはずの中国の制止すら振り切って、核実験および核搭載可能なミサイルの発射実験を繰り返している。
このような憂慮すべき事態が続く中で、幸いにも、昨年より、ようやくこの悪しき風潮と決別する動きが生まれてきている。昨年九月には安倍晋三内閣が三か月を超える国会審議の末に平和安全法制を成立させ、さらに本年七月の参議院選挙の結果、改憲を容認する諸政党で憲法改正の発議に必要な三分の二の議席を、戦後初めて衆参両院ともに獲得するにいたった。これらが「平和憲法擁護」の旗印の下に、安倍政権批判を繰り返してきた諸政党や市民運動グループによる激しい反対の中で実現した事実は、「戦後七十年」を経て、国民の意識が確実に変化していることを示している。
さて、天皇皇后両陛下におかせられては、昨年四月のパラオ共和国のペリリュー島ご訪問に引き続き、本年一月にはフィリピン共和国を訪れられ、先の大戦で亡くなられた方々への慰霊の営みをお変わりなく努められた。我々は、この御心を拝し、我が国の戦歿者追悼の中心施設である靖國神社に、できるだけ早く天皇陛下の御親拝が実現するよう、その御先導として安倍総理に靖國神社への「総理参拝の定着」を要望するものである。
結びとして、靖國神社に永久に鎮まります英霊の御前において、憲法改正の早期実現を中心とした懸案の諸課題に取り組み、強くて美しい国の再生を目指す国民運動を一層力強く展開することを、あらためて誓う。
右、声明する。
平成二十八年八月十五日
第三十回戦歿者追悼中央国民集会
英霊にこたえる会
日 本 会 議