平成24年10月の記事一覧
政府が皇室制度に関する有識者ヒアリングの論点整理を発表 ~皇室二千年の伝統を守るため皆さんの意見を政府に届けましょう
■作為的・恣意的な政府の「論点整理」との指摘が
政府は5日、本年2月より6回にわたり実施してきた有識者12名によるヒアリングをもとに、女性皇族の結婚後の皇室活動に関する「論点整理」を公表し、今後2ヵ月間、各党の意見や国民からのパブリックコメントを求めると発表しました。
論点整理のポイントは、以下の通りとなっています。
①女性宮家創設案
A案…配偶者と子にも皇族の身分を付与 → 検討進める
B案…配偶者と子には皇族の身分を付与しない → 検討進める
②尊称保持案 → 実施困難
③尊称保持案の代案としての国家公務員案 → 検討進める
※政府の論点整理では、いわゆる「女性宮家創設」案を、「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする案」とネーミングし、「尊称保持案」を「女性皇族に皇籍離脱後も皇室のご活動を支援していただくことを可能とする案」とネーミングしていますが、ここでは簡潔にするため「女性宮家創設案」「尊称保持案」としています。また、「尊称保持案」に関連して、今回全く新しく「国家公務員案」が登場しました。
「女性宮家創設案」は、たとえ一代限りでも「女系天皇」につながる恐れがあるとの重大な欠陥が指摘されていますが、政府は「更なる検討が必要」と述べるにとどまる一方、今回多くの有識者が賛同した「尊称保持案」については、「実施困難」と断定しています。これでは、今後の選択肢を「女性宮家創設」しかないと世論を誘導する論点整理だと指摘されてもしかたありません。早速、政府ヒアリングに招かれた櫻井よしこ氏は、「論点整理でなく論点捏造だ」 (産経新聞10月11日)と批判、百地章日大教授は、「極めて作為的、恣意的なものだ」(同10日)と問題指摘しています。
※あわせて会員専用サイトで、百地章先生の動画もご覧下さい。( http://www.nipponkaigi.org/movie 会員ページです)
〔ご参考〕12名の有識者ヒアリングの意見内容
日本会議でヒアリングのご意見を分析した結果は以下の通りでした。
(1)女性宮家創設案……………… 賛成8名、反対4名
(2)尊称保持案…………………… 賛成7名、反対1名
(3)旧皇族の養子・復帰案……… 賛成5名、反対2名
■政府は「尊称案」を否定し「女性宮家案」を優遇
有識者ヒアリングでは、「女性宮家創設」の問題点について、A案では、「歴史上一度もなかった制度で、女子皇族の結婚を機に皇室の中に突然民間人男子が入り込んでくることの危険性」や「女系天皇につながる危険性」などが指摘され、B案では、「夫婦や親子の間で『姓』も『戸籍』も『家計費』も異なる奇妙な家族が出現することの問題点」などが明確に指摘されています。
しかし、今回政府は、「適切な措置が必要」と触れるだけで識者の問題指摘を軽視する書きぶりに終始する一方、大方の有識者が賛成した「尊称案」については、「法の下の平等を定めた憲法14条との関係において疑義を生じる」ため「実施は困難」と一方的に断定。その代案として突然「国家公務員」として公的な立場を保持する案を提案しています。
百地教授はこの点に関し、「尊称案」は先の有識者ヒアリングで、あくまで「称号」であり「身分」ではなく、憲法上も問題ないと指摘。もし、「尊称案」が憲法違反なら、憲法第二条に規定された「皇位の世襲」に係らない「女性宮家創設案」の方こそが、皇位継承権を持たない特定の身分をつくる意味で憲法違反だと指摘しています(産経新聞10月10日)。
また、「国家公務員案」は12名の有識者の誰一人からも提案さておらず、論点整理から導き出された選択肢ではありません。これまで皇族としてご活躍いただいた方々が突然「国家公務員」となることの国民の違和感は強く、また「皇族の方に失礼だ」とのそしりを招かれません。
このような作為的・意図的に作文された「論点整理」と、これに基づき集められた国民意見をもとに、二千年以上続いた皇室制度の伝統が軽々しく改変されることは、絶対避けなければなりません。今を生きる国民の良識が問われています。
■皆さんの意見を政府に届けて下さい
政府は、この10月9日から12月10日の2カ月にわたりパブリックコメントを実施し、可能ならば来年の通常国会に皇室典範改正案を提出することを明らかにしました。皆さん、今回の政府による皇室制度改革が長い皇室の伝統を破壊することがないよう、政府の実施しているパブリックコメントに応募し、忌憚ないご意見を届けて下さい。
◎政府の意見県募集要項(政府ホームページより)
・御意見は、氏名、職業、住所(法人又は団体の場合は、その名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地)及び連絡先(電話番号又はメールアドレス)を明記の上、日本語により提出願います。
・意見提出先メールアドレス goiken.ronten@cas.go.jp
(添付ファイルは不可。意見は本文にお書きください。)
・下記の「意見提出フォーム」からも投稿可能です。資料は下記のアドレスから閲覧できます。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060121009&Mode=0
1、意見募集対象
「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」(平成24年10月5日公表)
2、意見提出期限
平成24年12月10日(月)必着(郵送の場合は同日消印有効)
3、意見提出方法
可能な限り電子メールにて、電子メールによる提出が困難な場合には郵送又はFAXにて、以下まで提出してください。
(1)電子メールの場合 goiken.ronten@cas.go.jp
注1) ウイルスメール対策のため、御意見については、添付ファイルは利用せず、メール本文に直接御記入下さい。
注2) 文字化け等を防ぐため、半角カナ、丸数字、特殊文字は使用しないでください。
(2)郵送の場合 〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1
内閣官房皇室典範改正準備室 「意見募集」係 宛
(3)FAXの場合 内閣官房皇室典範改正準備室 宛
FAX.03-3581-9826
4、意見記入要領
御意見は、氏名、職業、住所(法人又は団体の場合は、その名称、代表者の氏名、主たる事務所の所在地)及び連絡先(電話番号又はメールアドレス)を明記の上、日本語により提出願います。これらは、必要に応じて、御意見のより具体的な内容を確認させていただく場合などのために記入をお願いするものです。
なお、電子メール及びFAXの場合は題名に、郵送の場合は封筒の表面に、「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理に対する意見」御記入ください。
5、注意事項
・ 来庁又は電話による御意見については対応いたしかねます。また、皆様からいただいた御意見に対し、個別にお答えすることはできませんので、その旨御了承願います。
・ 法人名又は団体名で提出する場合には、組織内での必要な手続きを経た上で御提出下さい
(法人又は団体の意見であることを確認させていただくことがあります)。
なお、住所及び連絡先の記載のない法人名又は団体名による意見は受理できません。
・ 意見提出者名(法人または団体の名称及び代表者の氏名に限り、個人で提出された方の氏名は含みません。)及び職業(個人で提出された場合)については、いただいた御意見の内容とともに公表させていただく可能性がありますので御承知おきください。
●問い合わせ先 内閣官房皇室典範改正準備室 TEL.03-5253-2111(代表)
作為的、恣意的に論点整理-「女性宮家」こそ違憲の疑い濃厚(百地章日本大学教授)
10月5日に政府が公表した、「女性皇族の結婚後の皇室活動に関する『論点整理』」について、百地章・日本大学教授がその問題点を指摘されています。
百地教授は、政府が6回実施した有識者ヒアリング(12名)のお一人。筆者に転載の許可を頂きましたので、その論文を以下にご紹介いたします。
(あわせて、百地章教授の動画もご覧下さい。( 会員専用サイト http://www.nipponkaigi.org/movie )
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「女性宮家」こそ違憲の疑い濃厚 日本大学教授・百地章
(平成24年10月10日 『産経新聞』正論)
いわゆる「女性宮家」の創設については、2月以来、6回にわたって行われた有識者ヒアリングでも賛否両論が拮抗(きっこう)しており、新聞各紙でも「2案併記」、落とし所は「尊称案」などといった報道が繰り返されてきた。
事実、ヒアリングに呼ばれた12人のうち、「女性宮家」賛成は8人で反対が4人、一方、「尊称案」は筆者を含め賛成が7人で反対はわずか1人であった。
■作為的、恣意的に論点整理
ところが10月5日、内閣官房は突然「尊称案」を否定し、「女性宮家案」を中心に検討を進めるべきだとする「論点整理」を発表した。背景に何があったのか。
推測の域を出ないが、「女性宮家」を支持してきた羽毛田信吾前宮内庁長官や風岡典之現長官ら宮内庁幹部、それに園部逸夫内閣官房参与ら女系天皇推進派と、内容はともあれ、成果を挙げたい官僚らとの結託の結果であることは、まず間違いあるまい。
「皇室制度に関する有識者ヒアリングを踏まえた論点整理」と題する全文81ページの報告書は、極めて作為的・恣意(しい)的なものである。報道関係者向けに配布された「論点整理(概要)」では、A4判のわずか2ページの取りまとめの中で、「尊称案」は「付与は困難」「実施困難」と、理由も示されないまま重ねて否定されている。それに代わって突然、「国家公務員案」なるものが登場した。
他方、「女性宮家案」に対しては、ヒアリングの中で「男系で継承されてきた皇統の危機に備えるのが宮家であって、『女性宮家』など意味がない」、「歴史上一度も存在したことがなく、女性皇族の結婚を機に、皇室の中に突然、民間人男性が入り込んでくる危険極まりない制度である」などといった厳しい批判があった。
さらに「女性宮家案」のうち、「民間人男子配偶者と子にまで皇族の身分を付与する案(I-A案)」には、「女系皇族を容認するもので、憲法違反の女系天皇に繋がる危険がある」との批判が、「男子配偶者や子には皇族の身分を付与しない案(I-B案)」に対しては、「1つの家族でありながら、夫婦や親子の間で、『姓』も『戸籍』も『家計費』も異なる奇妙な家族となってしまうことへの疑問」などの重大な欠陥が指摘された。にもかかわらず、「論点整理」では「更なる検討が必要」と述べただけである。
「論点整理」では、旧皇室典範44条に倣い、女子皇族が結婚して民間人となられた後も「内親王」「女王」などの尊称を保持する「尊称案」について、一種の身分制度であり、そのような特別待遇を施すことは、法の下の平等を定めた憲法14条との関係において疑義を生じかねないとしている。
■伊藤博文の『皇室典範義解』
しかしながら、「尊称」はあくまで「称号」であって、身分を示すものではない。このことは伊藤博文著『皇室典範義解』の中で述べられており、筆者もヒアリングではっきり指摘した。にもかかわらず、論点整理では強引に違憲と決めつけたわけだが、それを言うなら、歴史上まったく例のない「女性宮家」こそ、新たな「身分制度」の創設に当たり、はるかに憲法違反の疑いが濃厚となる。
実は、このほど、筆者の尊敬する元最高裁長官の方から「メモ」を頂戴した。旅先からの走り書きであったが、「男子皇族が宮家として特別扱いされるのは、皇位継承にかかわるからであって、皇位継承と無関係な女性宮家は法の下の平等に反する」「尊称すら許されないというのに、なぜ女性宮家が許されるのか」とあった。
けだし至言である。憲法第2条の「皇位の世襲」が「男系継承」を意味することは、憲法制定以来の政府見解であり、皇位継承権者たる男子皇族に対し、「宮家」という特別の身分を付与することは憲法の予定するところである。しかし、皇位継承権を持たない女子皇族に対して、結婚後も「女性宮家」なる特別の身分を与えることは、「華族その他の貴族の制度」を禁止した憲法14条2項に違反するといえよう。
■旧宮家の男系男子孫を皇族に
ヒアリングでは、「皇族数の減少にいかに対処すべきか」「皇室のご活動をいかにして維持すべきか」の2点のみが問われ、「皇位継承権者をいかに確保すべきか」という最も肝心な点については敢えて触れないものとされた。露骨な「旧宮家」外しである。
皇族数の減少に対処し、将来、悠仁親王が即位される頃にお支えできる宮家を創設して皇室のご活動を維持するとともに、皇位の安定的継承を確保する方法は1つしかない。
いうまでもなく、連合国軍総司令部(GHQ)の圧力で無理矢理、臣籍降下させられた旧宮家の男系男子孫のうち相応(ふさわ)しい方々を「皇族」として迎えることである。にもかかわらず、敢えてその選択肢を排除し、強引に「女性宮家」を創設しようとする女系天皇推進派の皇室破壊の企てを何としても阻止しなければならない。
まさに「皇室の危機」である。