[夫婦別姓]「第三次男女共同参画基本計画」が閣議決定―多くの国民の要望活動で最悪の事態は避けられる
12月17日、「第三次男女共同参画基本計画」(以下第三次計画)が閣議決定されました。
今回の第三次計画の特徴は、民主党政権のもとで初めて策定された計画です。民主党内ではこれまで「夫婦別姓」推進派が大勢を占めており、仙谷由人内閣官房長官兼法務大臣、岡崎トミ子男女共同参画担当大臣が第三次計画策定の舵を取り、さらに12月に入ってからは官邸サイドが社民党との連携を模索したこともあり、その計画内容への影響が懸念されていました。
しかし、「夫婦別姓」については、11月22日に公表された内閣府原案通り「引き続き検討する」という表現にとどまることになりました。結果的に、民主党内の若手保守系議員の反対活動や、「夫婦別姓反対」を公約とする国民新党の主張に官邸が配慮する形となりました。
この第三次計画に「民法改正が必要である」と盛り込まれていれば、これから5年間国の予算を用いた啓発活動による世論誘導が行なわれたり、第三次計画を根拠とした夫婦別姓推進の地方議会決議などが行なわれたりしており、今回はこうした推進派に有利な環境づくりは、何とか避けられた結果となりました。
これはひとえに、4月に男女共同参画局が意見公募を行なって以降、多くの国民の皆さんが政府・国会に熱心に要望活動を続けた成果であります。しかしながら、第三次計画には依然として多くの問題点を含んでおり、計画内容が具体的な施策へと展開しないよう、今後とも政府与党の議論や予算審議を注視しなければなりません。
●第三次計画の改善点(主な3点)
7月23日に発表された男女共同参画会議答申などよりも、今回改善された「第三次基本計画」の主な3点を紹介します。
①夫婦別姓の推進について
7月答申では、民法改正が必要であると断言していたが、引き続き検討を進めるという表現にとどまった。
・男女共同参画会議答申(7月23日)
「家族に関する法制について、夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、選択的夫婦別氏制度を含む民法改正が必要である。」
↓
・第三次計画(12月17日)
「夫婦や家族の在り方の多様化や女子差別撤廃委員会の最終見解も踏まえ、婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正について、引き続き検討を進める。」
②人工妊娠中絶の権利について
7月答申では、すべてのカップルと個人が産む産まない権利を持つことを尊重し、人工妊娠中絶について刑法上の堕胎罪廃止を示唆する内容であったが、第三次計画では、中絶を個人の権利とする表現は見送られた。
・男女共同参画会議答申(7月23日)
「また、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)は、『すべてのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、並びに出産する時を責任をもって自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利、並びに最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを得る権利』とされている。」
「人工妊娠中絶・生殖補助医療に関する法制度について、多様な国民の意見を踏まえた上で検討が行われる必要がある。」
↓
・第三次計画(12月17日)
「人工妊娠中絶が女性の心身に及ぼす影響や安全な避妊についての知識の普及を図る。」
③同性愛の尊重について
内閣府原案では、男女の恋愛と同性愛、両性愛(異性にも同性にも恋愛感情を抱くこと)を同等の価値として並べていたが、第三次計画では併記を見送った。
・内閣府原案(11月22日)
「性的指向(異性愛、同性愛、両性愛)を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要である。」
↓
・第三次計画(12月17日)
「性的指向を理由として困難な状況に置かれている場合や性同一性障害などを有する人々については、人権尊重の観点からの配慮が必要である。」
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