[ブラジルからの提言]「小学校の英語教科化」反対
日本は、世界に稀に見る微妙な表現ができる日本語を持っている。
その単語の数は、世界で一番多く、50万語にもなるという。漢語をベースに日本で独特な発展を続けている言語であることを文部省の方々はご存知であるはずである。
今も尚、外国語より日本語に転換されている外来語が増え続けており、我々ブラジルに住むものが日本を訪れる時、その余りの多さにびっくりする。そしてその内容が分からず、日本に行って日本語が分からないことが解り、大きなショックを受ける。
日本の商用チラシを見るとき、その驚きは頂点に達する。横文字のオンパレードではないか。商品名やら、会社名まで横文字だ。本当に日本人はこれらの言葉の意味が分かっているのだろうかと疑う。ブラジル語から推測して英語系やラテン系の単語はおおよそ見当がつく。しかし、分からないものの方が断然多い。
戦後の日本歴史は、曲がりに曲がってしまい、日本人の誇りを奪い去る元となっている。この上に日本語の学習の時間を短くしてまで、英語の教科化を進めるのは、如何なものか。それでなくても日本人としてのアイデンティティを無くしつつある子供たちが、日本人として自覚を持てる最大の要素である「自分たちの言語」をも奪うというのか。
ブラジルに住んで半世紀が経とうとしている日本人移住者達の嘆きを聞いていただきたい。ブラジルは日本人にとって素晴らしい国である。日本人にとってこれほど過ごしやすい国が、世界のどこを探しても見つからないのを私たちは知っている。しかし、移住者にとって、その国の言語を完全にマスターすることはない。したくても出来ないのだ。私たち移住者の母国語はやっぱり日本語である。日本で育った子供達が、いつまでも日本人であることは日本語が土台になっているからである。
外国語を教え始めるのは、12歳からで充分である。ブラジルで育つ日系二世以下何世になろうと彼らの母国語は、ポルトガル語である。彼らはそれを土台にして数ヶ国語を平気でしゃべり書き読む。高等教育を受けられる年代になってから勉強すれば、そうなれる。低学年で英語を強制的に学べというのは間違っていると、体験上私たちには解る。
歴史を知らない民族は滅びるという。戦後の歴史教育の是正もままならぬ時に、正に日本語の教育まで英語化させようというのか。産業界からの要望だとはとても思えない。
ましてや教育に携わる方々の常識とはとても思えない。或いは、産業界も教育界に携わる方々までも、日本人としての誇りを持たぬことを望んでおられるのであろうか。
ブラジルに住むものとして、小学生に対する「英語の教科化」を強く反対します。
ブラジル日本会議 理事長 小森 広(25/10/15)
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