【動画】「共同体としての日本国を守るために」櫻井よしこ氏
櫻井よしこ氏(美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表・民間憲法臨調代表)の講演ダイジェスト映像の一部を公開します。
(提供:民間憲法臨調、美しい日本の憲法をつくる国民の会)
※平成28年5月3日に開催された、第18回公開憲法フォーラム「各党に緊急事態に対応する憲法論議を提唱する―すみやかな憲法改正発議の実現を!」での主催者代表挨拶。
「海道東征」-神武さまの御足跡を訪ねて (日本の息吹2月号より)
「海道東征」-神武さまの御足跡を訪ねて
安本 寿久 やすもと としひさ
昭和33年、兵庫県生まれ。大阪社会部次長、編集局次長兼総合編集部長、産経新聞編集長などを経て特別記者編集委員。著書に『評伝廣瀬武夫』、共著に『親と子の日本史』『坂の上の雲をゆく』『人口減少時代の読み方』など。また、古事記編纂1300年の平成24年より産経新聞に連載された「日本人の源流神話を訪ねて」の神話取材班キャップを務め、連載の一部をまとめた『海道東征をゆく神武さまの国造り』(正・続)を産経新聞大阪本社から出版(現在、この2巻の合本として『神武天皇はたしかに存在した-神話と伝承を訪ねて』が刊行されている)
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平成27年に産経新聞で連載された「海道東征をゆく 神武さまの国造り」は丹念な取材によって、「東征」の足跡を辿った画期的なものであった。戦後は、神武天皇の存在そのものを否定する説が横行したが、取材を通してのスタッフの確信は「神武天皇はたしかに存在した」というものだったという。取材班キャップを務めた安本氏にお話を伺った。―
■「神話を忘れた民族は滅びる」-根っこを忘れるな
― やはり学校教育でしっかりと教えなければいけませんね。
安本
そうそう。それで思い出しましたが、産経新聞に連載中の読者からの反響で興味深かったのは、60代以上の方が多かったことです。第一部「日本人の源流、神話を訪ねて」の連載時には奈良支局に200人の方からコピー下さいませんかと、電話や訪問があったという。私も連載担当の経験は長いのですが、こんなことは初めてでした。なぜ60代かというと、神話は知っているつもりだった。でもこんな物語だったとは知らなかったと。大蛇退治や因幡の白兎、海幸山幸などのお話は、戦後世代も絵本や祖父母の読み聞かせなどで知っているわけです。でも例えば、大国主命がウサギを助けて八上比売(やかみひめ)と結ばれるということまでは知っている。ところが、その後はあまり知らない。嫉妬した兄神たちに何度も殺されては生き返り、ついに根の堅州国に行って、今度はスサノオノミコトの試練に耐えぬいて、ついにスサノオノミコトから国造りの使命を受けて、国づくりをする。そんな物語が続いていたことは知らなかった。
― 連載を読んで初めて気づいたこと。
安本
ですから、幼稚園などで神話の絵本に親しんでいることの意味は大きい。つまみ食いではあるけれども、ああ、あのお話ね、と了解している。すると長じた後にそれをストーリーとして教えられると、呑み込みが早い。新学習指導要領では、神話について教えることになっているわけですから、物語の概略くらいは教えてほしいですね。
― 神武天皇の絵本もどんどん出てほしいですね。
安本
ええ、きっかけになればいいですね。天皇が現行の憲法でも象徴として君臨していらっしゃるのはなぜか、皇室の由来を語るのに神話を無視することはできない。まさにそこに源はあるわけですからね。それなくしては、なぜ憲法の第一章が天皇なのか、説明できないでしょう。
― 大学で憲法学を講じている竹田恒泰氏が、憲法第一章の授業の時には、古事記から始められるそうですが、的を射ていますね。
安本
ええ、根拠はそこにあるわけですからね。
― 最後に神武天皇の物語を伝える意味について改めてお願いします。
安本
カムヤマトイハレビコノミコトが日向を立たれて東征に向かわれたのが、45歳なんですね。そして、東征期間16年説を採ると、橿原で天皇に即位されたのは61歳ということになる。よほど気持ちが強くなければ、できなかったでしょう。そして、繰り返しになりますが、東征の過程で稲作を教え、文字通り、豊かな国造りをされながら進まれた。正に神武天皇は建国の父だと改めて思いますね。「12、13歳くらいまでに民族神話を学ばなかった民族は、例外なく滅んでいる」と歴史学者のトインビーが言っています。それは根っこを失ってはならないということだと思うんです。根無し草だといろんな苦難に耐える力がなくなるんですよ。昔ベトナムに旅行したとき、水上人形劇を観劇したことがあります。ハノイには国立の人形劇の劇場があって、子供たちに必ず観せることにしている。外国人用には英語のテロップが流れる。上演されていたのはベトナムの神話でした。山の神様と海の神様が結婚して卵がたくさん産まれました。半分から女の子が、半分から男の子が生まれました。山の神様は男の子を連れて山に帰りました。海の神様は女の子を海で育てました。だからベトナムは多民族国家なんですよと。
― おもしろいですね。
安本
人形劇団も国立なんです。つまり、国家が主導して子供たちに観劇させている。「どうしてですか?」と訊いてみました。すると、次のような答えが返ってきました。「ベトナムは同民族同士が南北に分かれて戦っていました。いま、それを一つにするために何が大事かと考えた時に、ベトナムという国ができた謂われから説き起こしていけばいいと。統一ベトナムができたときからこれをやっています」と。
― ああ、そういうことなんですね。
安本
国家が分裂したとき、国民の心をもう一度ひとつにする力が神話にはあるということなんです。だから国家分裂の危機に際して、どの国でも建国神話を思い出して団結しようとするわけです。日本は島国で恵まれた国だけれども、それでも歴史上国家の危機は何度かあった。その度ごとに建国の神話は甦っているんです。
― 幕末の危機が典型的ですね。
安本
そう、欧米列強の植民地化という危機を、明治維新を起こして乗り切ったわけですが、それは「諸事神武創業の始にもとづき」(王政復古の大号令)から始まっているわけですからね。話は飛びますが、平成24年(2012)の古事記編纂1300年をきっかけに始まった産経の神話シリーズの連載ですが、先述の通り、大きな反響があった背景には、平成22年(2010)9月7日の尖閣諸島中国漁船衝突事件があったと思っているんです。悪いのは向こうなのに日本政府が及び腰で逆にバッシングされるという後味の悪いものになってしまった。あの時、自信を失いかけた日本国民も多かったと思います。そこへ古事記1300年が巡ってきた。これによって自分たちは世界最古の歴史を持つ国なんだという自信を取り戻したんじゃないか。中国がごちゃごちゃ言って来たら、「たかだか建国60年そこらの国が何を言ってるんだ」と一蹴してやればいいと(笑)。60年と2670年(当時)とじゃ比較にもならない。
―なるほど、尊皇攘夷ではないけれども、対外的な危機感が自己防衛の意識となり、自分たちの国は一体どんな国なのかという自覚を求めるわけですね。
安本
アイデンティティを求める。またまた話が飛んで恐縮だけど、平成28年3月から産経で連載『戦後71年 楠木正成考』を始めたのですが、日本人がなぜ正成が好きなのか、というと、「公に尽くした」典型だからだと思います。足利尊氏は勝負に勝って幕府を立てたけれども、結局は私欲を刺激して作った政権にすぎなかった。3代将軍の義満は、大陸の明に朝貢貿易を行って、「日本国王に封ずる」と言われて喜んでいる。私欲、わたくしつまり「私」だけでできた政権は弱くてもろいものだから諸大名が跋扈して、応仁の乱に突入してしまう。一方で、敗れはしたけれども最期まで「公」たる天皇に忠義を尽くした正成は後世にまで尊敬を集めているわけですね。連載は、副題に『「公」を忘れた日本人へ』と付けましたが、昨今の世相を思うにつけ、今こそ、改めて「公」の精神を取り戻さなければいけないと思います。日本では、その公の中心に天皇、皇室がおられる。ですから日本においては、神話に由来する天皇陛下がおられる限り、どんな危機に遭っても国が一つにまとまる。本当にありがたい国柄です。だからこそ、いま、皇位継承の基盤の強化などいろいろと課題がありますが、皇室の安定こそ日本国の安定の大元ですから、しっかり守っていかなければならない。そのためにも教育で日本神話と日本建国の物語、天皇、皇室の由来をしっかりと教えなければなりません。連載の取材を通して実感したのは、神話が日本の歴史を貫いていることです。神話からの一本の糸でつながっている国に生まれ合わせた幸せを、建国記念の日を迎えるにあたり、改めてかみしめたいですね。
― 貴重なお話、まことにありがとうございました。
(日本の息吹 2月号からの一部抜粋)
12月23日、全国各地で天皇誕生日奉祝行事開催
愛知 記念講演会を開催
「天皇陛下の御誕生日をお祝いする愛知県民の集い」を開催。奉祝式典の後、鈴木由充氏による記念講演が行われた。▼
大阪 葛城奈海氏が講演
「天皇陛下のお誕生日をお祝いする府民の集い」を開催。「国と自然を守るということ」と題し、葛城奈海氏が記念講演。▼
広島 記念演奏会を開催
「天皇陛下のお誕生日をお祝いする集い」を開催。皇居勤労奉仕団の発表の後、平原雅啓氏によるバイオリンの記念演奏会を開催。▼
愛媛 「自由と愛国のマーチ」
松山市内で「天皇陛下のお誕生日をお祝いする集い」を開催。山口采希氏による奉祝コンサートが行われた。▼
岡田幹彦氏が講演
四国中央市内で「天皇陛下のお誕生日をお祝いする集い」を開催。岡田幹彦氏による記念講演が行われた。▼
高知 新保祐司氏が講演
「天皇誕生日をお祝いする県民の集い」を開催。都留文科大学副学長・教授の新保祐司氏による記念講演が行われた。▼
熊本 今年は益城町で開催
「天皇誕生日奉祝式典・被災地ご訪問感謝の集い」を被災地・益城町で開催。会場は多くの参加者の祝意に溢れた。▼
沖縄 奉祝パレードを実施
「第五回天長節奉祝パレード」を実施。奉祝の横断幕を掲げ、牧志公園~国際通り~県庁前広場までを元気良く練り歩いた。▼
新春対談 ”トランプ・ショック”と日本の覚悟 (田久保忠衛日本会議会長×古森義久氏)
田久保 忠衛 たくぼただえ 日本会議会長・杏林大学名誉教授 |
古森 義久 こもりよしひさ × 産経新聞ワシントン駐在客員特派員 麗澤大学特別教授 |
* * *
田久保
ドナルド・トランプ氏の勝利は驚きをもって受け止められていますが、私がまず思ったのは、ヒラリー・クリントン氏でなくてよかったなということでした。彼女が勝利していたらアメリカの政治は危機に瀕していたかもしれない。まず健康状態がひとつ。次に私利私欲にまみれたクリントン財団の問題。ここには中国系その他のダーティマネーが入っていたと言われている。そして、メールの公私混同問題。これは国家の安全保障に直結する。FBIの捜査対象の可能性のある人物が4年間大統領の椅子に座っていたらどうなるか。共和党が多数を取っている下院から大統領への弾劾決議が出たはずです。実際、クリントン氏が勝利したとしたらその瞬間に弾劾が発議されるという噂が流れた。もし私が中国の習近平なら弾劾と同時に尖閣諸島に武装漁民を入れたかもしれない。そのときアメリカも日本も手の打ち様がない。4年間の任期中、大統領が国内の野党勢力に脅されっぱなしになり、リーダーシップを発揮できずに、超大国アメリカがガタガタになっていた可能性がある。それにしても、米国の戦後史に大統領選で、互いの私行をこれだけ激しく暴き合う例があったかどうか。アメリカのモラルの低下をもたらしました。
古森
しかもクリントン氏の支持派のなかには、いまだに選挙結果を認めない人々がいる。まるでアナキズム(無政府主義)じゃないですか。
田久保
とはいえ、トランプ氏でよかったと手放しで喜べるものでは決してない。上下両院を与党(共和党)が占める強力な権限を持つ大統領が誕生することとなった。政策論争が少なかっただけに、トランプ氏の政策の方向性は、ほとんど未知といっていい。「米国第一主義」「孤立主義」「保護主義」などいくつかの断片的なキーワードはある。これらがそのまま実行されればアメリカの衰退は確実だが、果たしてどうなるかは誰にも分からない。なぜこうした無謀なことを言ってもトランプ氏が支持されたのか。それは米国内だけでなく、国際社会、ことに欧州の動きと無関係ではない。そこでまず、この世界的な動きについて私の見方をお話ししたい。今の国際情勢を私は三つの観点から見ています。
ひとつは、冷戦後いろいろな経過をたどった結果、どうやら価値観で分けられるような対立の構図が見えてきた。自由、法治、人権など普遍的価値観を共有する国々と、そうではない国々と。後者はロシア、中国、北朝鮮、イランなどが代表的な例でしょう。二つ目は、戦後の国際システムが帰着したところのグローバリゼーションに対するノーの動きが起こってきたことです。欧州ではイギリスがEUからの離脱を決定した。ブリュッセルにいるユーロクラートというEUの国際官僚が仕切って加盟国に指令を送ってくる。例えば移民、難民政策という、本来はイギリスの議会が決めるべき問題に対してブリュッセルが口出しをしてくる。つまりイギリスの主権とぶつかったわけです。イギリスに限らず欧州各地で移民、難民の増加に象徴されるグローバリズムへの不満が高まっている。三つ目は、国際政治学は国家と国家の関係を論じてきたけれども、まったく別のプレイヤーが現れたということです。9・11米同時多発テロ以降、続出してきた国際テロリストが、いまISを始め各地でテロを起こして各国の秩序を揺るがしている。フランス、イギリス、ドイツ、インド、パキスタン、そして南アジア、東南アジアに至るまで全世界的に波及しています。以上、三つが今日の国際情勢の特徴だと思います。そういう情勢を背景として、米国にトランプ氏が登場したと理解しています。
古森
今のお話と重なる部分もありますが、長年、現地でアメリカウオッチをしてきた立場から、アメリカの状況について述べたいと思います。グローバル化の行き過ぎに対する反発、主権国家の「主権」に対する見直し。この二つの流れがトランプ現象の背景にあります。グローバリゼーションで象徴的な問題は一つが移民、難民、ことに不法移民の増加であり、もう一つがテロの脅威です。外交面でいえば、マルチラテラリズム(多国主義)の問題がある。物事は二国間ではなく多国間で進めて行きましょうと。オバマ政権はこれが好きだった。一方で、主権国家の主権ということがあまり好きでなかった。世界に対して普遍的価値観を投射してその普及拡大に努めて行こうというアメリカの伝統的なやり方が嫌いだった。ファウンディング・ファーザーズという建国の父たちがいて、キリスト教にいた自由、競争、メリトクラシー(実績主義)によるアメリカンドリームを追い求めていくアメリカが嫌いだった。逆にオバマ大統領はこういうアメリカらしい価値観を否定し、競争して勝ち負けを競うのではなく、平等な社会に重きを置く社会主義的な政策を採った。このままでは、アメリカがアメリカでなくなるという、オバマ政権の超リベラル政策への反発がアメリカ国民の間に高まって行った。国家という人間だけが営むことの出来る存在なくしては人間は生きていけないという現実に国民が回帰し始めた。実は、2001年の9・11のときも同じような流れがありました。ブッシュ(ジュニア)政権でしたが、3千人が殺されて、テロの頻発、ことに細菌兵器への危機感が高まった時に、やはり国民そして社会を助けるのは主権国家なんだと。
例えば、世界貿易センタービルが破壊されたときまず出動したのは消防署であり、仮にバイオ兵器が使われたならば、まず動くのは保健所であり、軍の特殊部隊である。医療機関などの民間はその後にくる。つまり公という意味での主権国家こそが国民を守ってくれるのだという意識が高まった。ところが、そのブッシュ政権がイラクなどでやりすぎて、バラク・オバマの時代となった。それから8年間経てトランプの時代となる。ですからトランプ現象とは何かを一言でいえば、「オバマ否定」なのです。8年間オバマ大統領が体現してきたものを少なくとも選挙中のトランプ氏はすべて否定してきました。超大国アメリカの振り子が左に触れていたのが、真ん中に戻ってきて、これから右に触れるだろうという局面にきているのだと思います。オバマ氏が体現してきた少数民族や貧困層、移民などへの優遇策はクリントン氏が当選していたら引き継がれていた。彼女は不法移民も含めて1100万人はそのままでいいと言ってきた。そこでそのような移民流入の流れという方向の振り子はそのまま振れたままでいるのかもしれないと私は観察していました。ところが、やはりそうじゃなかった。貧困層、移民への援助の原資は、自分達が払っている税金だと中間層の不満は頂点に達していた。それが振り子を元に戻そうとしたのです。この超大国アメリカで起きた変化がこれから国際情勢にどういう影響を及ぼすのか。私は、百年に一度のパラダイムシフトが起きるかもしれない、そういう歴史的転換点のような気がしています。
(日本の息吹平成29年1月号より 平成28年11月15日対談)
日本会議の「新憲法の大綱」について
日本会議の「新憲法の大綱」について
日本会議は、前身の「日本を守る会」「日本を守る国民会議」以来、一貫して「憲法改正」「新憲法制定」を提唱してきました。
平成3年6月、日本を守る国民会議は冷戦終結後の内外情勢の変化を受けて「新憲法制定宣言」を発表しました。その後、2年間の研究活動を経て平成5年に「新憲法の大綱」を発表し、徳間書店から『新憲法制定宣言』を刊行しました。
平成7年から「新憲法研究会」を設置し引き続き研究活動を行い、平成13年には、改訂した新憲法大綱を明成社から『新憲法のすすめ』として発刊しています。
平成19年、国会で「国民投票法」が成立し、憲法改正は関連する条文ごとに発議されると定められたことから、日本会議は現在、テーマごとに改正の必要性を提言しています。
ここに、本会の憲法改正案の骨格を示すため、改めて「新憲法の大綱」全文を掲載いたします。
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●新憲法制定宣言
現行憲法は、その不幸な制定経過のため、我が国の伝統に基礎を置かず、自虐史観の論理で占められ、日本を自主独立国家として規定していない。その結果日本国民は、内には祖国への誇りを失い、外には国際社会から軽侮と不信を受け続けてきた。しかし、冷戦は終結し、世界は新たな時代を迎えた。我が国はもはや、国家意思を曖昧にしたまま、世界の傍観者であり続けることは許されない。
今こそ日本は、固有の国柄を明らかにし、かつ国際責任を果たすべく、国家の基本法たる憲法を根源的に問い直すときに来ている。それは、我が国の悠久の歴史をつらぬく伝統に基づき、新しい国際時代を切り開く新憲法を制定することである。
我らは、近代日本の礎を築いた先人の偉業を継承する中で、国際社会の平和と協調互恵の実現、自然と人類の共存共栄を希求し、国家の自主独立の精神と祖国愛にあふれた崇高な理念を基調とする新憲法の制定を決意する。
かくして、日本国民が自らの意志によって新憲法を制定するとき、現行憲法体制は終焉し、祖国日本は、国際社会から尊敬と信頼を得る国家に新生するであろう。ここに我らは新憲法制定を内外に表明し、その実現に向けて力強く国民運動を展開することを宣言する。
平成3年6月16日
日本を守る国民会議
(この宣言は、平成3年6月に開催された本会の第10回総会において、我々がめざすべき憲法構想を研究・作成し、新憲法制定運動を開始する旨を宣言したものです。)
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●新憲法の大綱
日本会議新憲法研究会
一、前 文
我々日本国人は古来、人と人との和を尊び、多様な価値の共存を認め、自然との共生のうちに、伝統を尊重しながら海外文明を摂取・同化することにより独自の文化を築き、天皇と国民が一体となって国家を発展させてきた。
我々は、このような我が国固有の国体に基づき、民意を国政の基礎におく明治以来の立憲主義の精神と歴史を継承発展させ、国民の自由と権利を尊重するとともに国家の一員としての責任を自覚して新たな国づくりへ進むことを期し、併せて世界の平和と諸国民の共存互恵の実現に資する国際責任を果たすために、この憲法を制定する。
二、天 皇
我が国の歴史をふまえ、天皇の地位と権能を明確にする
(1)日本国は立憲君主国である。
天皇は日本国の元首であり、日本国の永続性及び日本国民統合の象徴である。
(2)天皇は元首として、内閣の補佐に基き左の行為を行う。
1、内閣総理大臣の任命
2、衆議院及び参議院議長の任命
3、最高裁判所長官の任命
4、憲法及び皇室典範の改正、並びに法律及び政令の公布
5、条約の批准並びに公布
6、国会の召集及び衆議院の解散
7、衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の施行の公示
8、国務大臣及び法律の定めるその他の公務員の任免
9、全権委任状及び外交使節の信任状の授与
10、外交使節の接受
11、栄典の授与
12、元号の制定
13、恩赦
14、儀式
(3)天皇は伝統に基く祭祀、儀礼その他象徴にふさわしい行為を行う。
(4)天皇の行為については内閣が全て責任を負う。
(5)元首及び象徴の尊厳は守られるべきことを明記する。
[今後の検討事項]
1、皇室典範の整備(践祚(ぜんそ)及び大嘗祭、皇族の監督権等について明記し、皇統についても触れる。なお皇室典範は法律ではあるけれども、その改正のためには皇室会議の審議を要するものとし、皇室が実質的に関与することによって一般の法律とは異なる扱いをする)。
2、皇室経済法の整備(相続税の適用除外等の明記)。
3、宮内庁の位置づけの再検討。
4、その他皇室関連法規の整備。
三、防 衛
正義と秩序ある平和の追求を宣言するとともに、国軍の保持並びに国軍に対する政治優位の原則を明記する
(1)我が国は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国際条約を遵守して、国際紛争を平和的手段によって解決するよう努める。
(2)我が国の安全と独立を守り、併せて国際平和に寄与するため、国軍を保持する。
(3)国軍の最高指揮権は、内閣総理大臣が行使する。
(4)国軍の指揮及び編制は、法律で定める。
四、国際協力
我が国の国際社会に対する積極的な寄与を目指し、新たに、「国際協力」の章を設ける
(1)我が国は、各民族及び各国家の共存共栄の精神に基づき、次に掲げる 目的の実現のための積極的な国際協力を行う。
1、自由で公正な国際経済社会の実現。
2、自然保護と産業開発の調和、各国の自助及び応分の負担を原則とする地球環境の保全。
3、世界的規模での文化財保護その他固有の民族文化の復興。
五、国民の権利及び義務
現代国家にふさわしい新しい権利を採用するとともに、現行の権利及び自由について補正する。加えて具体的人権と公共の福祉との調和をはかる。
(1)憲法で定める自由及び権利は、国政上、最大限尊重されなければならない。同時にそれは、権利の濫用の禁止、他人の権利の尊重及び公共の福祉の実現のため制限され得る。
(2)自由を享受し、権利を行使するに当たっては、自助努力と自己責任の原則に従うとともに、公共の福祉の実現のために努力する責任を負う。
(3)現代国家にふさわしい新しい権利や義務規定を採用する。
(4)情報に関する新しい権利と義務の規定を新に設ける。
1、国民は法律の定めるところにより、政府及びその機関の有する情報の開示を求める権利を有する。但し、国防・外交・公安上の機密情報及び企業、個人の秘密に関わる情報及びその公開が公共の福祉を害するおそれがあるとして法律で定める情報については、国はこれを保護する義務を負う。
2、個人の秘密に関わる情報は、保護されなければならない。但し、国の安全を害する場合、犯罪捜査、税務調査その他法律で定める場合を除く。
(5)環境に関する権利と義務を新たに規定する。
1、国民は、健康で文化的な生活を維持するため、公共の福祉に反しない限度において良好な自然環境を享受する権利を有する。
2、国民は自然環境を保護し、将来の国民にこれを伝えるよう努めなければならない。
(6)国民の義務として、教育を受ける義務、納税の義務に加えて、新たに遵法義務及び国を守る義務を明記する。
(7)信教の自由を保障するとともに、国及びその機関が、特定宗教を布教・宣伝し、並びにそのための財政的援助をしてはならないこと、また宗教団体による政治支配を禁止する旨を明記する。
(8)表現の自由は、最大限尊重されなければならない。但し、個人の名誉の保護、青少年の保護その他公益上の必要のため、法律の定めるところにより国はこれに制限を加えることができる。
(9)婚姻における個人の尊重及び両性の平等とともに、国は国家・社会の存立の基盤である家族を尊重、保護、育成すべきことを明記する。
(10)教育は、この憲法の前文に掲げられた理念を基本として行われるべきこととともに、学校教育に関する国家の責任を明記する。
(11)財産権については、国土の公共性を明らかにするとともに、国民の財産権と、国土の利用及び自然環境の保護との調和をはかることを明記する。
(12)本大綱に掲げる権利、義務のうち、国家構成員たる国民に固有のもの以外は、原則として外国人にも適用する。
六、国会及び内閣
国会と内閣については、抜本的な見直しを行い、国政の刷新をはかる
(1)現代国家の要請に応えるべく、国会と内閣について新たな役割分担を考え、統治機構の再構築をはかる。
1、国会の「最高機関性」を見通す。
2、内閣および内閣総理大臣の権限を強化する。
(2)「権威の府」としての参議院の独自性を発揮させるべく、左の点において現行の二院制を抜本的に見直す。
1、議員の選出方法
2、憲法上の権限
3、運用上の配慮
(3)憲法に政党条項を設け、政党は国民の政治的意思の形成に協力し、その結成及び活動は自由であること、並びに政党の組織及び運営は民主的でなければならないことを明記する。
[補足事項]首相公選制について
首相公選制については、検討の結果、これを採用しないこととした。
七、司 法
憲法訴訟を専門に扱う部門を、最高裁の中に設置する
(1)憲法訴訟の続出と裁判の遅滞に対処し、憲法解釈の統一をはかるべく、最高裁の中に憲法訴訟を専門に扱う部門を設置する。
(2)最高裁の裁判官の国民審査制度については、新憲法ではこれを採用しないこととする。
八、地方自治
中央集権を是正し、地方自治の活性化をはかる。
(1)地方自治の本旨を明らかにし、行政の広域化に対処するために、地方自治体の再編と権限の再配分をはかる。
九、 非常事態
非常事態については、新たに以下のような規定を設ける
(1)我が国が外国から武力攻撃を受け、またはその危険が切迫している場合、及び内乱・騒擾(そうじょう)、大規模自然災害等の非常事態が生じた場合、内閣は国会の事前又は事後の承認のもとに、政令により、非常事態宣言を発することができる。非常事態においては、国軍の出動を命じ、及び法律に定めるところにより、非常事態が解消されるまで一定の権利の制限を行うことができる。事後の承認が得られなかった時、また非常事態が終了したと認められた時は、政府は解除宣言を発しなければならない。
(2)右の非常事態及び経済恐慌その他の緊急やむを得ざる事態において、国会が閉会中のときには、内閣は緊急命令と緊急財政処分の命令を制定することができる。緊急命令と緊急財政処分の命令は、すみやかに国会の事後承認を得るものとする。事後承認が得られなかった時、また緊急やむを得ざる事態が終了したと認められた時は、政府は失効宣言を発しなければならない。
十、憲法改正
(1)憲法改正は、国会または内閣が発議し、衆参両院の総議員の五分の三以上の賛成を必要とする。
平成5年5月3日 公表
平成13年2月11日 改訂
天皇陛下の「象徴としてのご公務のあり方について」のお言葉を受けて(平成28年10月18日)
天皇陛下が8月8日にお示しになった、象徴としてのご公務のありかたについては、本会としては、お言葉に示された主旨を重く受け止めております。
既に政府の方向性については、さまざまな報道がなされているところですが、現在は有識者会議の議論が開始されたばかりであり、本会として、具体的な結論を出しているわけではありません。
本会としては、どのような方向性で陛下の御心に適う方策があるかについて、今後、有識者会議及び政府の検討の推移を冷静に見守ってまいります。
尚、7月の報道以降、日本会議に参画する学者・文化人の方々が、皇室制度のあり方について発言されていますが、いずれも個人としての発言であり、本会の見解をあらわしたものではありません。
日本会議報道における虚偽・誤解・偏見に関する反論
日本会議に関する最近の一連の報道について
―日本会議報道における虚偽・誤解・偏見に関する反論―
日本会議広報部
最近、日本会議に関する新聞・週刊誌の報道や、書籍等の出版がにわかに活気づいている。
しかし、残念ながらこれらの報道や出版物には、日本会議の運動の歴史的な経緯や一次資料を踏まえることなく安易な陰謀論に陥ったり、一面的な批評に止まっていたりするものが少なくない。
私達の運動は、戦後見失われようとしてきた伝統文化を守り、日本を取り巻く厳しい国際環境の変化の中で、自立した対等な独立国家としての矜持を持った国づくりを目指した国民運動を推進してきた。
特に、近年の北朝鮮による拉致事件や工作船の活動、核・ミサイル開発、中国による南シナ海や尖閣諸島周辺での勢力拡張や威嚇、米国の内向きの姿勢は、国民の間の危機意識を高めていると考えられる。日本会議への共感や支持の拡大は、このような国民意識の変化に後押しされている点と無関係ではないだろう。
ここでは、私たちの活動を子細にご紹介する機会はないが、昨今の報道・出版の虚偽、誤解、偏見などにつき簡単に反論を加えておきたい。
■なぜこの時期に、これほど多くの報道や出版がなされたのか
今回の参院選は、当初から憲法改正の国会発議を可能とする3分の2の勢力が確保できるか否かが大きな注目を集めていた。7月の参院選に向けて報道が過熱した背景には、改憲勢力3分の2の確保を何としても阻止したいという勢力の意図が見て取れる。
特に安倍政権は、第二次政権の発足以降、高い支持率を維持している。
これらの出版物に通奏低音のように流れているのは、安倍政権を支えているのは日本会議であり、日本会議は「戦前回帰」「歴史修正主義」の「宗教右派(カルト)」とのレッテルである。このようなレッテルを貼ることにより、有権者への不安感を煽り、野党勢力の挽回拡大を狙ったものと考えられる。
■安倍首相と日本会議の関係
日本会議には、友好団体として日本会議国会議員懇談会(超党派の国会議員連盟)があり、活動している。
この超党派議連は、平沼赳夫衆議院議員を会長とし、自民党、民進党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党などの所属議員約290名が加盟されている。国会議員懇談会は独自の活動を行うとともに、日本会議から民間の請願を受け取り、国政について広く意見交換を行う存在となっている。
第二次安倍政権発足以降、安倍総理始め閣僚の多くが懇談会に所属し影響力を及ぼしているといった報道があるが、果してそうであろうか。
民間団体の日本会議は、政府や政党に対して政策提言や要望書、国会請願署名を提出することがある。これは、憲法に保障された請願権の行使である。
私達は、確かに広報活動や各種行事開催などの国民運動を全国で繰り広げ、世論を盛り上げ、そして政府や国会を後押しし、法律や政策実現をめざしている。しかし一部報道に散見される、日本会議の方針に基づいて党や政府の政策が立案されているという指摘は、日本会議の影響力をあまりにも高く評価し過ぎており、現実にはそのようなことはありえない。
■日本会議は、「帝国憲法復元」を目指していない
昨今の報道・出版物の多くに共通しているのが、日本会議が「帝国憲法復活」を目指しているという言説である。これは日本会議が戦前回帰を目指しているとする悪質なプロパガンダに他ならない。
日本会議は、その前身の「日本を守る会」「日本を守る国民会議」結成以来、40年間一貫して「憲法改正、新憲法制定」を訴えてきた。「日本を守る国民会議」は平成3年(1991年)に「新憲法制定宣言」を公表し、新憲法制定運動を提唱、平成5年(1993年)に大枠をまとめた『日本国新憲法制定宣言』(徳間書店)を公刊した。以後、日本会議内部に「新憲法研究会」を設置して「新憲法の大綱」の研究活動を重ね、平成13年(2001年)には『新憲法のすすめ』(明成社)として公刊している。
これらの略史はホームページにすでに公開済みであるが、過去・現在において、帝国憲法復元を運動方針に掲げたことは一切ない。
■日本会議と宗教団体の関係
こうした「帝国憲法復活」といった分析が出てくる背景の一つが、「日本会議」の前身、「日本を守る会」の構成団体の一つ「宗教法人生長の家」との関係だ。
その前に、日本会議と宗教団体の関係について明らかにしなければならないだろう。
日本会議には、神道系、仏教系、キリスト教系などの沢山の宗教団体や社会教育団体、各種団体等が運動に参画している。
「日本を守る会」が昭和49年に設立に際して、次のような逸話が残されている。「日本を守る会」結成の発起人の一人である臨済宗円覚寺派の朝比奈宗源管長が伊勢神宮を訪れた折、「お前たちは世界だ人類だと、上ばかり見て騒いでいるが、足許を見よ、いま日本は、ざらざらと音を立てて崩れているではないか」との思いが脳裏をかすめ、「目が覚める思いだった。わしゃぁお伊勢さまから叱られたよ」と、同管長は述懐されている。
この思いが、神社界、仏教界、キリスト教界など、同憂の複数の宗教団体、有識者、文化人に広がり、当時、影響力を増していた唯物思想や共産主義思想から日本の伝統文化を守ろうと、信仰や思想信条の垣根を越えた大同団結が実現した。
このように、それぞれの団体の教えや国家観、歴史観と、「日本を守る会」の理念が一致し、それぞれの団体が活動に協力され今日に至っているのである。以上の経緯からしても、日本会議やそこに参画している教団がカルト集団だという指摘は、全く的外れな批判であることはいうまでもない。
■生長の家は30年以上前に脱会
「生長の家」との関係についても一言しておきたい。
「日本を守る会」の結成以後、生長の家の創始者谷口雅春氏は、会の代表委員を務め、昭和天皇御在位50年祝賀行事や元号法制化などの国民運動に尽力し、その後、昭和56年の「日本を守る国民会議」結成以後、国民運動に協力されてきた。
しかし、同教団は昭和58(1983)年に政治活動や国民運動を停止し、日本会議の前身である「日本を守る会」「日本を守る国民会議」から脱会した。以後30年以上、本会とは交流が全くない。同教団からの指導、影響が及ぶことはありえない。
一部報道では、元信者が日本会議の運営を壟断しているという指摘がある。
しかし、日本会議の活動において、特定宗教の教義に影響され運動が展開されるということは全くあり得ない。日本会議は極めて民主的に運営されており、さまざまな運動方針や人事は、規約に則り政策委員会、常任理事会、全国理事会など役員会の審議を経て、決定・推進されているのである。
■日本会議は何を目指した団体なのか
それでは日本会議は、何を目指して活動しているのか。私たちは、「誇りある国づくり」を合言葉に、以下6点の基本運動方針を掲げている。
1、国民統合の象徴である皇室を尊び、国民同胞感を涵養する。
2、我が国本来の国柄に基づく「新憲法」の制定を推進する。
3、独立国家の主権と名誉を守り、国民の安寧をはかる責任ある政治の実現を期す。
4、教育に日本の伝統的感性を取り戻し、祖国への誇りと愛情を持った青少年を育成する。
5、国を守る気概を養い、国家の安全を保障するに足る防衛力を整備するとともに、世界の平和に貢献する。
6、広く国際理解を深め、共生共栄の実現をめざし、我が国の国際的地位の向上と友好親善に寄与する。
この方針に基づき、私たちは過去さまざまな国民運動に取り組んできた。
天皇陛下御即位20年など皇室のご慶事奉祝行事、元号法・国旗国歌法の制定運動、教育基本法の改正運動、戦歿者英霊への追悼感謝活動、自衛隊海外派遣支援活動、尖閣諸島等の領土領海警備強化の活動、そして、憲法改正運動である。
現在の日本社会には、サイレントマジョリティーという顕在しない良識派の多数意志が伏在している。実は日本の文化・伝統は、こうした良識派意志によって支えられ守られてきたのではないだろうか。しかし、これは顕在化しないかぎり力にならない。私たちの国民運動は、こうした世に現れていないサイレントマジョリティーを形に表し、民主的な手続に基づいて法律や行政などの政策を実現することを目標としている。
いよいよ、憲法改正の国民運動が本格化してきた。まさにサイレントマジョリティーの真価が問われる秋といえる。
■憲法審査会の論議の活性化を
今回の参議院選挙において、日本国憲法施行後初めて憲法改正に前向きな政党により3分の2が確保され、衆・参両院で憲法改正発議が可能となった。
各党はこの民意を厳粛に受け止め、速やかに国会の憲法審査会の審議を再開し、改正を前提とした具体的な論議を加速させるべきである。
与野党各党におかれては、国会の憲法審査会において、日本の将来を見据えた活発かつ真摯な憲法論議を繰り広げられることを期待する。
制定以来70年、現行憲法は国民の意志で選択する機会を失われてきた。国民投票の機会を得て、今こそ憲法を国民の手に取り戻す好機を迎えているといえよう。
いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の立場について
いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の立場について
7月13日の報道に端を発したいわゆる「生前退位」問題について、一部報道やネット情報の中に日本会議に関する誤った報道が散見されます。例えば、『週刊文春』(8月11~18号)誌上では、「天皇生前退位に『日本会議』が猛反発」と報じられています。目下、日本会議は組織として以下の見解を持っており、かかる報道に類する立場を表明しておりません。
◎いわゆる「生前退位」問題に関する日本会議の基本見解について
<七月十三日夜のNHKニュースが「天皇陛下『生前退位』の意向示される」と報じたことを発端として、現在、諸情報がマスコミ各社によって報道されている。しかし、その多くは憶測の域を出ず、現時点で明確なのは、政府および宮内庁の責任者が完全否定している事実のみである。
この段階で、天皇陛下の「生前退位」問題に関連して本会が組織としての見解を表明することは、こと皇室の根幹にかかわる事柄だけに適当ではないと考える。確証ある情報を得た時点で、改めて本会としての見解を表明することを検討する。平成28年8月2日>
第24回参議院選挙結果を踏まえて
日本会議広報部
平成28年7月11日
今回の参議院選挙において、憲法改正に前向きな政党が3分の2の勢力を確保したことは、国民の間の憲法改正への理解が表れた結果であると受け止めている。
各党はこの民意を厳粛に受け止め、速やかに国会の憲法審査会の審議を再開し、改正を前提とした具体的な論議を加速させるべきである。
民進党も、未来志向の憲法を国民と構想すると公約している以上、従来の方針を改め、憲法審査会での審議を充実されるよう期待する。
杉尾秀哉氏の個人演説会での発言に関する見解
去る6月22日 長野市内で開催された個人演説会で、参議院議員候補の杉尾秀哉氏は「日本会議が考えている憲法改正は、大日本帝国憲法の復活です」と発言しました。
この発言は、一連の虚偽の報道に基づいており、有権者に誤解を与えるものであり、強く抗議し訂正を求めます。
日本会議は、その前身の「日本を守る会」「日本を守る国民会議」結成以来、一貫して憲法改正を訴えてきました。
日本会議は、平成3年に「日本国憲法制定宣言」を公表して、新憲法の制定を提唱し国民運動を開始し、平成5年に「新憲法大綱」を発表しています。
その後、「新憲法研究会」を設置して議論を重ね、平成13年に『新憲法のすすめ』(明成社)として解説書を公刊しております。
このように、結成以来今日まで「大日本帝国憲法復活」などの方針を掲げたことは一切ありません。
■2月29日、鳥越俊太郎氏の発言に対する日本会議の見解
2月29日、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏らは、高市早苗総務大臣の放送法に関する国会答弁に対する抗議の会見を開いた。
鳥越氏は、その質疑応答の中で、「放送法の遵守を求める視聴者の会(以下視聴者の会)」に関連し、次のように述べたとされる。
「日本の社会が戦後70年たち、全体として右側に保守化している事実は認めなければいけない。その空気の中で、日本会議という右翼的な団体があって、そこからお金が出て、産経と読売に意見広告が出ている、ということがある程度分かってきている」(以上、「産経ニュース」2月29日17時40分配信記事より引用)
このように鳥越氏は、日本会議が「視聴者の会」の意見広告に資金提供していると述べた。
しかし、本会として「視聴者の会」意見広告への資金提供を行うことや、または「視聴者の会」活動に賛同することを機関決定した事実は存在しない。
これは明らかな虚偽及び事実無根の内容であり、 日本会議が意見広告に資金提供しているとの誤った認識を国民に与えるもので、到底看過しえない。
もとより、国民には様々な手段や方法を通じて、自らの信条を表明する権利や、思想信条を共有するものとグループを結成する権利が保障されており、意見広告とてその例外ではない。
「視聴者の会」賛同者には、本会役員と重複する人がみられるが、これは個々の有識者が、個人の自由意志によって「視聴者の会」に賛同しているものである。
よって本会は、鳥越氏の発言に断固抗議し、発言の撤回と謝罪を求める。
[安保]成立より1ヶ月、安保法成立の意義(「安保・国民フォーラム」の声明より)
「平和安全法制」の成立から1ヶ月が過ぎようとしていますが、いまだに反対集会や、それを過剰に取り上げるマスコミ報道が見られます。
法案成立後の9月19日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏、JR東海名誉会長の葛西敬之氏、憲法学者の西修氏ら各界の賛同人からなる「平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム」では、「平和安全法制の成立を歓迎し、断乎支持する」との声明を発表されました。
この「国民フォーラム」の声明では、平和安全法制成立の意義と期待が簡潔に述べられています。
小会でも、その全文を入手しましたので、ここにご紹介いたします。
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「平和安全法制の成立を歓迎し、断乎支持する」
本日、参議院で漸く平和安全法制が成立したことは、誠に喜ばしく心から歓迎したい。
今日の国際情勢の劇的変化を考えれば、日本国民のいのちと暮らしを守るため、平和安全法制は、一日も早く確立されなければならなかった国家最優先の課題であり、安倍総理の英断を断乎支持する。
南沙諸島、西沙諸島等において、対話を無視し、力による現状変更を容赦なく推し進める中国の海洋進出、それにより脅威に晒されるわが国のシーレーン、わが国も目標とされる北朝鮮の核ミサイル開発―。これらの脅威に対処し平和と安全を守るためには、もはやわが国一国だけでは困難であり、日米同盟の強化は不可欠である。日米安保条約と自衛隊の必要性は、国民の8割以上が認めている。法案の成立によって日米の信頼と絆はより深まり、わが国への武力進攻を思い留まらせる「抑止力」は飛躍的に高まると確信する。
特にわが国の生命線たるシーレーンの安全は、東シナ海から南シナ海に至る広大な海域における船舶の自由な航行を前提としている。平和な海を守るため、わが国は、米国を中心に、オーストラリア、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア、ブルネイなどの各国との連携も不可欠であるが、各国との連携は一朝一夕にできるものではない。法案の成立により、自衛隊が関係各国との共同訓練など、日頃から連携を深め、平和な海を守るために貢献できることを期待したい。
日米同盟を強化し「抑止力」を高めるこの度の平和安全法制に、反対派は「戦争法案」などというレッテルを貼り、国民の不安を煽ってきた。いうまでもなく、「抑止力」を高めることは、戦争を未然に防止し、戦わずしてわが国を守る最善最良の方策である。法案に反対することは、戦争誘発のリスクを高めることであり、これこそ国際情勢の激変を無視した、大海をしらない「井の中の蛙」の議論にほかならない。
当フォーラムは、これからも必要に応じて、国民の誤解を解消し、正しい理解を深めるための努力を惜しまない。平和安全法制の意義と必要性は、今後時間の経過とともに必ずや多くの国民が理解し、受け入れるものと確信している。
平成27年9月19日
平和安全法制の早期成立を求める国民フォーラム
トピックス : 安保法,
[歴史] 終戦七十年にあたって日本会議の見解
終戦七十年にあたっての見解
大東亜戦争終結より七十年の歳月を経て、戦争の真実も戦後の苦難の歩みも知らない世代が国民の大半を占めるにいたった。しかしながら、国民が享受する今日の平和と繁栄は、先の大戦において祖国と同胞のために一命を捧げられたあまた英霊の尊い犠牲の上に築かれたことを忘れてはならない。この英霊への感謝の念こそ、この節目の年を迎えた日本国民が共有すべき歴史認識の第一であるべきである。
周知のように、中韓両国は、わが国の近現代史を、両国への一方的な侵略の歴史であったとしてわが国に謝罪を要求する外交圧力をかけてきている。歴史には光と影があり、わが国近現代史の歩みのすべてを肯定するつもりはない。ごく当たり前のことだが、普通の社会生活における争いごとでも一方の側を完全な誤りと決めつけられないのと同様、わが国の行為のみが一方的に断罪されるいわれはない。外交は常に相手国があってのものである。ましてや大東亜戦争は、米英等による経済封鎖に抗する自衛戦争としてわが国は戦ったのであり、後にマッカーサー連合国軍最高司令官自身もそのことを認めている。
しかるに戦後のわが国では、過去の歴史に対して事実関係を無視したいわれなき非難を日本政府および日本軍に向ける風潮が横行してきた。いわゆる「従軍慰安婦強制連行」問題もその一つである。中韓両国の謝罪要求は一部日本人およびマスコミが作り上げた虚構に触発されて出されたといってよい。幸いにも終戦七十年を迎えて、わが国にようやくかかる風潮と決別し、事実に基く歴史認識を世界に示そうとする動きが生まれてきた。安倍首相の一連の言動にもその顕れは観取できる。何よりも歴史的事実に基づかない謝罪は、英霊の名誉を傷つけるものであるからだ。
今さら申すまでもなく、戦後の原点は、終戦の詔書で示された昭和天皇の御心を心として、祖国の再建と世界の平和の実現のため、わが国のあり方に思いを致し国民が力を尽くすことにある。その端的な事績こそは、独立回復直後の昭和二十九年以来、誠実にアジア諸国に対する戦時賠償と経済協力を積み重ねることで信頼関係を醸成してきたことではないか。この点は先ごろ来日したフィリピンのアキノ大統領も、国会演説において「貴国は、過去の傷を癒す義務を果たす以上のことを成し遂げ、真に利他的な意志をもって行動しました。……我が国の発展に対する貴国の貢献は、単に大規模であったというだけではありません。長年にわたり一貫して続けられてきたのです」と評価している。
今日、中国による国際法無視の傍若無人な海洋進出によってアジアの安全保障環境は激変した。積極的平和主義を掲げるわが国に対し、今や欧米ならびにアジア諸国などからいっそう積極的な世界平和の推進への貢献が期待されている。
終戦七十年を迎えるにあたり、我々日本会議は、こうした喫緊の事態に迅速・適切に対処するとともに、憲法改正の実現を中心とする国民運動の諸課題に取り組み、誇りある国づくりを目指す決意を新たにするものである。
平成二十七年八月六日
日 本 会 議
[安保] 安全保障関連法制問題に関する本会の見解を発表いたします
平成27年7月6日、安全保障関連法制問題について本会の見解を発表いたします。
平成27年6月4日の衆議院憲法審査会で、自民党推薦の憲法学者ら参考人全員が国会で審議されている安全保障関連法案を「従来の政府見解の枠を超える」などとして「違憲」としたことから、反対派が勢いづき審議が難航することとなった。この結果、通常国会の大幅延長、また憲法審査会の審議中断という事態となった。
そもそも集団的自衛権については、国連憲章51条において主権国家が持つ固有の権利とされている。この51条に関して、わが国は国連に加盟するにあたって何の留保条件もつけてはいない。日本が留保なしで国連憲章51条を受け入れ、また憲法9条が明示的に集団的自衛権を禁止していない以上、憲法9条の下においても、集団的自衛権を含めた自衛権の行使は当然認められる。昭和34年の砂川事件最高裁大法廷判決も、米軍駐留および日米安保条約という集団的自衛権にかかわる事案において、わが国が主権国家として「自衛権」を有し、「必要な措置」を取り得るとしているのである。
しかも今回国会に提出された安全保障関連法案は、日本以外の武力行使であってもそれによって「日本の存立が脅かされる危険がある場合」に限って集団的自衛権の行使を容認しようとする「集団的自衛権限定容認」の立場に立つものである。
また集団的自衛権の行使の限度も、これまでの政府解釈において憲法9条が認める自衛権行使の条件とされてきた「必要最小限の実力行使」にとどまる。したがって安全保障関連法案は憲法9条の許容範囲であり、合憲であることは明白である。
近年、わが国を取り巻く国際環境には、劇的な地殻変動が起きている。アメリカのオバマ大統領が『世界の警察官』をやめると宣言したとたんに、中国は、南シナ海を自国領海であるとして軍事基地化を強行して、関係諸国と深刻な対立を引き起こしている。この海域は、わが国の重要な海上輸送路でもあり、航行の自由が脅かされる事態となっている。
こうした国際環境の変化に対応するべく、日米関係を中心に国際協力をより強力にしてアジアの平和を維持するため、国会は、速やかに安全保障関連法案の成立をはかるべきである。これらの法案が成立し、日米の同盟関係が強化されれば、わが国の平和に大きく資するのみならず、フィリピンはじめ東南アジア諸国の期待にわが国が応えることにもなる。
それとともに、安全保障関連法案をめぐる国会論議は、自衛隊の活動のあり方が憲法9条論争を招き、世界の平和とわが国の安全を守るために必要な政策決定が滞るという、過去幾度も繰り返されてきた悪例を再現したものとなった。この貴重な時間の空費のそもそもの原因は、憲法9条が自衛隊の存在に一切触れておらず、そのため、自衛隊を合憲とする政党と違憲とする政党が国会に混在していることにある。
平成27年3月発表の内閣府の世論調査によれば、現在、国民の75.5%は日本が戦争をしかけられたり巻き込まれたりする危険があると考えており、ほとんどの国民がそう思う理由を「国際的な緊張や対立があるから」としている。一方、憲法9条があるからそうした危険はない、と考える国民は8.5%にしか過ぎない。そして91.2%の国民は、自衛隊を支持し、日本の安全保障を自衛隊が担うことを期待している。
わが国を取り巻く国際環境の変化や国民世論を踏まえ、国会は、速やかに憲法審査会の審議を再開して、一刻も早く自衛隊の存在を憲法に明記するために憲法9条改正案を発議し、国民の意思を問うべきである。
平成27年7月6日
日 本 会 議
[慰霊]両陛下、パラオへ慰霊行幸啓-日本とパラオの絆
天皇皇后両陛下におかれては、4月8~9日、大東亜戦争の激戦地であるパラオへ戦歿者慰霊のため、行幸啓になります。
このたび天皇陛下が、激戦地パラオの地で深い鎮魂・慰霊の祈りを捧げられることは、戦歿者やご遺族にとってこの上ない喜びになることと確信いたします。
パラオは、第1次世界大戦後、日本の委任統治領となり多くの日本人が移住した地です。そして 大東亜戦争の末期には、日米の激戦地となりました。
その歴史の中で、日本とパラオは深い絆を結んで参りました。
日本会議では、かつてパラオの現地・取材を行い貴重な映像を、『天翔る青春-日本を愛した勇士たち』(日本会議事業センターDVD)に収めています。この機会にご紹介いたします。
■パラオで歌われる、「ペリリュー島の桜を讃える歌」
パラオの人々が、当時の日本兵を思い作詞・作曲した歌です。(※このページの下方に歌詞の一部を紹介)
■当時の日本人の姿、そして、今の日本人の姿。
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「ペリリュー島の桜を讃える歌」
作詩/トヨミ・オキヤマ
作曲/トンミ・ウエンティー
激しく弾丸が降り注ぎ、オレンジ浜を血で染めた
強兵たちはみな散って、ペ島は全て墓地となる
今、守備勇士(もののふ)の姿なく、残りし洞窟(じんち)の夢の跡
古いペ島の習慣で、我らは勇士の霊魂(たま)守る
平和と自由の尊さを、身をこなにしてこの島に
教えて散りし「桜花」、今では平和が甦る
戦友遺族の皆さまに、永遠(いついつ)までもかわりなく
必ず我ら待ち望む、桜とともに皆さまを
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戦歿者と遺族に寄せられる深い思し召しに感謝申し上げるとともに、81歳というご高齢での行幸が無事実現されることを、心より祈願いたします。